アメリカの義務教育
アメリカの義務教育

アメリカの義務教育

新型コロナウイルスの流行の影響を最も大きく受けた分野の一つが学校教育。今回は、コロナ禍を経て、アメリカの学校教

私は、アーバイン統一学校区のコミュニティー・リエゾンとして勤務していて、大きく分けると二つの業務があります。一つは日本人家庭で言語サポートが必要な生徒をフォローし、ELD(English language development)の案内や、家庭と通訳との仲介の仕事。もう一つは、学校に関する最新の情報を、正確に、必要に応じて発信することです。最新の情報自体は統一学校区のウェブサイトにいち早く掲載されるのですが、そういった情報を、必要に応じてJBA(南カリフォルニア日系企業協会)のような日系の団体や、各種エージェントと連携して発信しています。アーバイン学校区では、72言語が使用されており、6カ国語のリエゾンがいます。日本語のリエゾンがいるのは、南カリフォルニア近辺ではアーバインのみではないでしょうか。非常に多様性の高い学校区です。

全米でも指折りの学校区を支える充実した体制 コロナ禍でも教育の質を下げないという意識

コロナウイルスのパンデミック後、まず当然ながらCDC、そしてカウンティーのガイドラインを遵守し、その上で、オンライン授業でも教育レベルを下げないということを目指し、対応してきました。オンラインのプラットフォームの使用は、慣れている先生からそうでない先生まで、差があったことは事実ですが、IVA(Irvine Virtual Academy)というプラットフォームを使用して授業を展開してきました。現在、そして今後も当面は、このIVAと対面のどちらでも同じレベルの教育を提供する方針です。こうしたオンラインでの授業は、コロナ禍を受けて導入したものですが、やはりもともと、学習進捗を確認できるデジタルツールというのは、アメリカは日本に比べると進んでいたようには思います。

トレンドはメンタルケア、ソーシャルジャスティス アメリカの学校ではコミュニケーションを大切に

また、サマースクールは、ぜひ活用していただきたいです。夏休みのうちに学力を強化できるものがたくさんあります。学校区が主催のものだと、学区の生徒のみというケースも多いですが、例えばアーバインだと、IPSF(Irvine Public Schools Foundation)という財団の提供しているものであれば、学校区外からでも参加は可能です。機会を生かして、いろいろなものに参加してみるといいと思います。

近年では、「Parent Portal」や「Canvas」といったデジタルツールを使って、成績や進行状況を把握することが容易になっています。まずは、保護者の皆さんが気付いたことがあれば、先生や私たちリエゾンなどに伝えてください。そこから学校、またそれ以外に必要なエキスパートがいれば、協力を仰ぐことができます。英語で「Same Page」と表現しますが、全ての人が同じ目線で子どもを見ることができている、そういったことを意識していただけたらと思います。

現地校の先生に聞きました!

【現地校】 Rudy Ramirezさん 1997年から教員。キンダー・1・3・4年生の担任、教頭を務めた後、校長となり、現在はパサデナ統一学校区のSan Rafael Elementary Schoolの校長として12年勤務。2019年、「Principal of the Year, Pasadena Unified School District」に選ばれる。

【ポイント①】Dual Languageで多言語・多文化教育推進 【ポイント②】保護者や地域の声を最大限教育に反映する

Dual Language Programで多言語・多文化教育を進める

私が今勤めているSan Rafael Elementary Schoolは、創立104年の公立小学校で、キンダーから5年生まで、1クラス25人の3クラス、1学年75人ずつが在籍しています。地区でも最も人気のある学校の一つで、毎年入学の抽選が行われています。

本校の特徴はDual Language Programを行っていることで、英語と、スペイン語・中国語・フランス語との2言語クラスを展開しています。1年生では「90ー10」(母国語を90%、英語を10%)からスタートし、学年が上がるとともに「80ー20」「70ー30」と英語比率を上げていくという学習法です。このDual Language Programは、もともと移民のために2005年ごろから始められた施策ですが、現在では子どもを多様な文化に触れさせたいという裕福な家庭に高く評価されています。子どものころから他者との違いに触れ、なぜ違うのか、そしてそのどちらも美しいのだということを理解できるプログラムです。パサデナ統一学校区でこのプログラムが行われている小学校は全体の3分の1程度。学校数も対応言語数ももっと広げたいですし、州としても全学校の50%を目標に拡大を進めています。

確固とした信念を持ち、意見を受け止め長期で実現

若い先生とも話をする機会が増えていますが、そこでも強調するのは、苦情に慣れること、そしてバランスを取ることです。本当にいろいろな意見が、保護者や地域から来ます。それに耳を傾けることは当然大切ですが、自分のコアの信念は変えないことも同時に大切です。極端な意見を持つ人はどこにでもいるものですから、全員を満足させることは不可能だと心得て、真ん中の75~80%の層を幸せにできればいい、という感覚が大切だと考えています。一方で、「Never say “No”」、意見に対して「No」とは言わない、まずは受け止めて、2~3年というスパンで実現が可能かどうか検討するようにしています。そして一度やると決めたら、途中で投げ出さずに実現させる。こうした思いで施策を打ってきたことが、今の学校の評価につながっていると思います。前述のアートや音楽の先生を雇うことになったのも、こうした保護者の声から始まったもの。今後も保護者や地域の声も取り入れて、よりよい学校作りを進めていくつもりです。

【現地校】 Michael Watterさん ニュージャージー生まれ。大学では映画について学び、大学卒業後、ロサンゼルスに移住。エンターテインメント業界で約5年働いた後、UCLAで教育を学び、2012年から中学・高校の数学の教員。現在はGlendale Unified School Districtの高校に勤める。

【ポイント①】多様なデジタルツールを活用 【ポイント②】以前と同じ学校環境まであと少し!

通学は再開したが、まだまだ制限は多い

私は今、Glendale Unified School Districtにある公立の高校で数学を教えています。このGlendale市の学校区には、金銭的に裕福なエリアの学校から、補助の必要な学校まで混在していて、私の高校は政府からの補助を受けている「Title1」というカテゴリーに含まれます。現在私たちの学校では、基本的には対面授業に戻っていますが、マスクの着用は必須、アクティビティーもかなり制限されていて、コロナ禍以前の状況に戻るのはもう少し時間がかかりそうです。

デジタルツールは教育の幅を大きく広げた 数式を組み合わせて、楽しい図形を作ることもできる「Desmos」。Image: Powered by Desmos

Kami:先生はPDFをアップロードし、生徒はそれにPC上で書き込み、提出できるというインタラクティブなツール。あらゆる教科で活用できる、汎用性の高いサービスです。

Desmos:数学の関数の授業でこのDesmosのグラフ計算機ツールが重宝しています。数式を入れるだけですぐにグラフを作成してくれたり、グラフから式を求める問題をゲーム感覚で出題することができたり。各生徒の正否も一覧で表示されます。

あらゆるジャンルのクイズがそろう「Kahoot!」は、多くの生徒のお気に入り。Photo: ©Kahoot!

Nearpod:パワーポイントに近いのですが、その中に問題を散りばめて生徒に解答させ、その結果もまとめて見られる、双方向のプレゼンテーションツールです。

Kahoot!:あらゆるジャンルのクイズが用意されているサイトです。アカデミックなものから息抜きに使えるものまで、対象学年・レベルも細かく分かれています。生徒たちも「Kahoot!をやるよ」と言うと大喜びの、とても人気のあるツールです。

コロナでの変化をポジティブな変化に

前述したような情報は、「Tech Specialist」と呼ばれるスタッフが中心になって集め、共有しています。私の学校では、先生のうち一の人が「Tech Specialist」を兼任し、全校の先生に情報発信してくれています。私自身は、コロナ禍になる前から、ある程度こういったデジタルツールを使っていたのでそれほど戸惑いはなかったのですが、特に年配の先生は苦労された方が多かったと思います。私にとって一番難しかったのは、Zoomを使った授業に慣れること。便利なツールとはいえ、どうしても実際に顔を合わせて授業をするのとは違いますから、コミュニケーションは難しいですし、多くの先生・生徒とも苦労しているところだと思います。

【現地校】 片島 幸さん かたしま・さち◎2012~18年、ファウンテンバレーの高校に勤務し、現在はネバダ州・Clark County School District高校生(9~12年生)の日本語と数学のクラスを担当している。

【ポイント①】日本語を通して文化背景も伝えたい 【ポイント②】今後は日米の教室をつないだ授業を!

コロナの状況に合わせて対応する日々 デジタルの進化を感じる一方、メンタル面の不安は大きい 日本語を通して文化を知ってもらうことの面白さ 授業の質の向上に向けて、常に試行錯誤の連続

補習授業校・日本人学校の先生に聞きました!

あさひ学園

【補習授業校・日本人学校】 平居 繁和さん ひらい・しげかず◎滋賀県出身。2004~07年、サウジアラビア・ジッダ日本人学校派遣教諭、14~16年、メキシコ・日本メキシコ学院派遣校長。また、湖南市小学校校長、湖南市教育研究所所長を歴任。20年より、文部科学省からの派遣にて、ロサンゼルス補習授業校あさひ学園校補習授業校・日本人学校長を務める。

【ポイント】日本の教育で人格完成を目指す

西大和学園

【補習授業校・日本人学校】 金澤 峻さん かなざわ・しゅん◎兵庫教育大学卒業。兵庫県内の学校で6年間勤めた後、渡米。サンノゼの学校で1年半勤務した後、2017年から西大和学園に勤めている。現在は平日校で4年生の担任と1~9年生に音楽を、補習校ではアーバイン校の教頭補佐と2年生を担当。

【ポイント】逆境を乗り越え成長する先生たち

(ライトハウス・カリフォルニア版2021年12月16日号掲載)

「アメリカでの教育」のコンテンツ

  • イマージョン・プログラムについて学ぼう
  • アメリカのボーディングスクール大解剖
  • サマーキャンプ/サマースクール
  • 大活躍中のあの人の親に聞くアメリカでの子育て。(インタビュー)
  • アメリカの大学A to Z
  • 学ぶ意思を尊重するアメリカ高等(大学・大学院)教育の仕組み
  • 中学生の子供を残したまま、日本へ帰国する方法は?
  • 通学区域の違う公立学校への越境通学はできますか?
  • 日本語イマージョンとは?
  • 現地校での「オープンハウス」。目的は何でしょうか?
  • 州をまたいだ転校で気をつけることは?
  • 国際バカロレアとは何ですか?
  • アメリカの大学の授業料はいくらくらい?
  • キンダーから大学まで、1人の子供に必要な学費はいくらですか?
  • AP試験にはどのようなメリットがある?
  • 日米の大学におけるメリットとデメリットは何ですか?
  • 4月生まれの子供が編入するとアメリカでは何年生になる?
  • ホームスクールとは何でしょうか?
  • アメリカの教育に対する基本方針とは?
  • アメリカの教育制度について、その全体を知りたい
  • コミュニティカレッジから4年制大学への編入の注意点とは?
  • 渡米したばかり。どうしたら早く現地校に適応できる?
  • ロサンゼルスで受けられる日本語教育について教えてください
  • 現地校と補習校の両立が大変。どうしたらいいですか?
  • アメリカの学校での成績評価方法とは?
  • カリフォルニア州の州立大学、CSUとUCの違いは?
  • 夏休みの活用方法を教えてください
  • 日本の学校への短期留学について教えてください
  • 日本の学校への体験入学について教えてください
  • サマースクールって何ですか?
  • アメリカの「マグネットスクール」「ギフテッドクラス」とは何ですか?
  • 5段落エッセイ(Five Paragraph Essay)とは何ですか?
  • アメリカの高校制度とは
  • アメリカでの高校生活の悩み
  • アメリカの中学校に通う子どもの悩み
  • アメリカの小学校に通う子どもの悩み
  • キンダーに就学できる年齢は?歯科検査が必要って本当?