夏目漱石『文鳥』「美しい女」のモデルから漱石との関連まで
『文鳥』は、明治41年に発表された夏目漱石の短編小説。稿用紙25枚程の短編ながら、白文鳥の可憐で繊細な描写が印象深い作品です。ここでは、そんな『文鳥』のあらすじ・解説・感想までをまとめました。『文鳥』はあくまで漱石の実体験に基づく小説であり、私小説とノンフィクションは似て非なるものなのです。
確かに、この石塔は、私の母が、初代の猫を弔うために建てたのだけれど、実際を云うと、この猫だけを供養する積りで建てた訳ではないのである。というのも、今でこそ、戦火に焼かれて、その石面は、見分けのつかぬほどに焼けただれてはいるけれどもは、以前は、台石の表面に、猫をはさんで、犬と文鳥の三つの像が、仲良く並んで刻み込まれていたのである。
犬というのは、近所の家の池にはまって、死んでいた吾が家の飼犬であり、文鳥の方は、飼って間もなく、家人の不注意から、餌を忘れて殺してしまった、哀れな父の飼鳥である。
夏目伸六『父・夏目漱石』(「猫の墓」),文春文庫,1991年初版,198~199頁
・「美しい女」のモデル 「美しい女」のモデル = 日根野れん自分はこの朝、三重吉から例の件で某所まで来てくれと云う手紙を受取った。(中略) 三重吉に逢ってみると例の件が色々長くなって、一所に午飯を食う。(中略) 翌日眼が覚めるや否や、すぐ例の件を思いだした。いくら当人が承知だって、そんな所へ嫁に遣るのは行末よくあるまい、まだ子供だから何処へでも行けと云われる所へ行く気になるんだろう。一旦行けば無暗に出られるものじゃない。世の中には満足しながら不幸に陥って行く者が沢山ある。などと考えて楊枝を使って、朝飯を済まして又例の件を片附けに出掛けて行った。
夏目漱石『文鳥・夢十夜』,新潮文庫,1976年初版,24頁
『文鳥』ー感想
・漱石は文鳥を愛していたのか?- この記事を書いた人
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