欧米の新薬開発動向
欧米の新薬開発動向 ブリストル マイヤーズ スクイブはCD19を標的とするキメラ抗原受容体T細胞療法、Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)の第2相TRANSCEND
ブリストル マイヤーズ スクイブはCD19を標的とするキメラ抗原受容体T細胞療法、Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)の第2相TRANSCEND FL試験における二次治療コフォートの成績をASH(米国血液学会)で発表した。23人中22人がORR(客観的反応率)を達成、その全員がCR(完全反応)だった。メジアン16ヶ月追跡で反応持続期間は未だメジアン値に達していない。CAR-Tに付き物のサイトカイン放出症候群はG3の発生率が1%、G4、G5はなかった。G3神経学的イベントの発生率も2%と低く、G4、G5はゼロ。
ブリストル マイヤーズ スクイブはASH(米国血液学会)でBCMAを標的とするCAR-T療法Abecma(idecabtagene vicleucel)のKarMM-3試験のアップデート・データも発表した。3種類の代表的な抗癌剤を既に経験し最終治療に応答しなかった難治再発多発骨髄腫の薬として米欧日で承認されているが、本試験は3代表薬を含む2~4次治療歴を持ち最終治療抵抗性の難治かつ再発多発骨髄腫における便益を標準療法群と比較した。主評価項目のPFS(無進行生存期間)は22年の中間解析で成功、ハザードレシオ0.49、13.8ヶ月対4.4ヶ月と良好な成果を上げた。しかし、今回、副次的評価項目の全生存期間がハザードレシオ1.01、41.4ヶ月対37.9ヶ月と、差が小さく有意でなかったことが明らかになった。クロスオーバー可であったため標準療法群の56%が進行後にAbecmaによる治療を受けており、その影響を除外した感受性分析ではハザードレシオが0.69と上向いたとのことだが、有意水準には達していない模様であり、そもそも先行解析がフェールしているため説得力は万全ではない。
Mind Medicine(Nasdaq:MNMD)はMM-120(lysergide d-tartrate)が後期第2相全般不安症試験で良好な結果を出したと発表した。FDAと相談した上で24年下期に第3相へ進める考え。後述のMDMAといい、幻覚剤の医療使用が前進してきた。
ブリストル マイヤーズ スクイブは22年に欧米で切除不能/転移黒色腫用薬として承認されたOpdivo(nivolumab)と抗LAG-3抗relatlimabの合剤、Opdualagで様々な第3相試験を実施しているが、RELATIVITY-123試験は中止すると発表した。マイクロサテライト安定性のある転移結腸直腸癌の2~4次治療薬としての便益をStivarga(regorafenib)またはLonsurf(trifluridine、tipiracil)を投与する群と比較していたが、独立データ監視委員会が中間解析結果を踏まえて続行しても目的達成の可能性は極めて低いと無益認定したため。免疫チェックポイント阻害剤の併用は当初期待されたほどの成果を挙げていない。
【承認申請】アムジェンはAMG 757(tarlatamab)を小細胞性肺癌の3次治療薬として米国で承認申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は24年6月12日。 小細胞性肺癌の8割で発現し健常細胞にはないデルタ様リガンド3(DLL3)とT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体で、半減期延長装飾を行い二週毎投与を可能にした。エビデンスとなる第2相DeLLphi-301試験で220人の患者を10mg群と100mg群に割付けてORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)を調べたところ、夫々40%と32%だった。有害事象はクラス・イフェクトであるサイトカイン放出症候群が各51%と61%で発生したがG3は1%と6%だけ、G3のICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群)はなかった。
100mg群のORRが見劣りするのは忍容性の問題なのだろう。ESMO(欧州臨床腫瘍学会)やNew England Journal of Medicineで結果発表した時の会社側プレスリリースには10mgのデータしか記されていなかったので、この用量だけ申請したのではないか。
精神療法のセッションを行う時に1.5~2時間おいて2回、経口投与する。第3相試験二本では第18週のCAPS-5(Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)が偽薬比有意に改善した。二本目の試験の探索的解析では71%の患者がDSM-5における診断基準に該当しなくなった(偽薬群は47%)。深刻な有害事象は発生しなかった。但し、MDMAは心室期外収縮のリスクが指摘されている。
同社は1986年設立の非営利研究・教育組織、Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies(略称MAPS)が、サイケデリックやマリファナなどの合法的な販売を目標に、設立した。PBC(Public Benefit Corporation)は州法における法人形態の一つで、営利法人だが株主と同等またはそれ以上に公益も重視することを定款で定めている。税制上のインセンティブなどは無い模様であり、人間としての誇りの表明だ。
【承認審査・委員会】Vertex Pharmceuticals(Nasdaq:VRTX)がCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)から共同開発販売権を取得して承認申請したCasgevy(exagamglogene autotemcel)はベータサラセミアや鎌状赤血球病のex vivo遺伝子療法。正常な赤血球を生成できない患者に、患者から採取した造血幹細胞を、本来は胎児期などにしか発現しない胎生ヘモグロビンを産生できるように遺伝子編集して培養し、患者に戻す。CRISPR-Cas9技術を用いた製品の第一号で米国でも今月、鎌状赤血球病に承認され、来年3月にはベータサラセミアでも承認される見込み。どちらも12歳以上で造血幹細胞移植が適応になるがHLA適合ドナーが見つからない患者が対象で、鎌状赤血球病における便益は血管閉塞性クリーゼの抑制、ベータサラセミアでは赤血球輸血の抑制。条件付き承認なので26年8月までに臨床試験の最終解析結果や長期追跡データを提出するなどして本承認を取得しなければならない。
【承認】神経芽細胞腫の米国における年間診断数は700~800人で、その5割が高リスクと判定され5年生存率は5割程度とされる。eflornithineは米国で1990年にアフリカトリパノソーマ症(睡眠症)用薬Ornidylとして承認されたが商業上の理由で発売されなかった模様だ。クリーム製剤が脱毛用薬として承認されたが現在は販売されていない模様。全く異なる用途で復活することになるが、神経芽細胞腫で多く発現するオルニチン脱炭酸酵素を阻害する作用が寄与しているようだ。開発は順調ではなく様々な会社が関わった後、今年7月にUS WorldMedsがCancer Prevention社からライセンスした。