「南院の競射」(道長と伊周の弓争い・競べ弓)『大鏡』テスト対策&練習問題
「南院の競射」(道長と伊周の弓争い・競べ弓)『大鏡』テスト対策&練習問題

「南院の競射」(道長と伊周の弓争い・競べ弓)『大鏡』テスト対策&練習問題

【元予備校講師、進学校教員がテスト対策!】『大鏡』「南院の競射」(弓争い・競べ弓)のテスト対策を6ステップで図解付きでナビ。問題演習込みでテスト直前にも使える実践的対策を紹介!

帥 (そち) 殿 (どの) の南院にて人々集めて弓あそばししに、この殿渡らせ給へれば、思ひかけずあやしと、 中 (なかの) 関 (くわん) 白 (ぱく) 殿思し驚きて、いみじう 饗 (きやう) 応 (おう) し申させ給うて、 下 (げ) 﨟 (らふ) におはしませど、前に立て奉りて、まづ射させ奉らせ給ひけるに、帥殿の 矢 (や) 数 (かず) 、いま二つ劣り給ひぬ。中関白殿、また 御 (お) 前 (まへ) に 候 (さぶら) ふ人々も、「いま 二 (ふた) 度 (たび) 延べさせ給へ。」と申して、延べさせ給ひけるを、安からず思しなりて、「さらば、延べさせ給へ。」と仰せられて、(『大鏡』より)

読みで問われやすい語
  • 帥 (そち) 殿 (どの) の南院にて人々集めて弓あそばししに、
  • 下 (げ) 﨟 (らふ) におはしませど
  • 中関白殿 、また 御 (お) 前 (まへ) に 候 (さぶら) ふ 人々も、
  • いま 二 (ふた) 度 (たび) 延べさせ給へ。
解答はこちら(タップで表示) あらすじの確認 ↑タップして画像を拡大できます
  1. 弓あそばししに、この殿わたらせたまへれば、思ひかけずあやしと中関白殿おぼし驚きて、
  2. まづ射させたてまつらせたまひけるに、
  3. 御前にさぶらふ人々
  4. 「いま二度延べさせたまへ。」
  5. やすからずおぼしなりて、

「テスト対策」では文章全体の細かい現代語訳などは載せていません。現代語訳や丁寧な文章の解説などは、以下の「読解のコツ&現代語訳」をタップしてご覧ください。また、 出題ポイントがまとまっている板書パネルは「読解のコツ&現代語訳」にあります ので、興味がある人はそちらもご覧ください。

弓あそばししに、この殿わたらせたまへれば、思ひかけずあやしと中関白殿おぼし驚きて、 (訳)はこちら(タップで表示)

(帥殿が)弓の競射をなさった時に、この殿(道長公)がいらっしゃったので、思いがけず妙だと、中関白殿(道隆公)は(心の中で)驚きなさって、

「あそばししに」の「あそばし」はサ行四段活用動詞「あそばす」の連用形で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形ですが、「あそばす」は、「遊ぶ」「す」の尊敬語になります。ここでは「弓の競射をなさる」くらいに訳しておくとよいでしょう。過去の助動詞である「し」のあとに「時」を補って、 「弓の競射をなさった時に」 と解釈します。先程も書きましたが、「弓あそばししに」は、 帥殿(藤原伊周)の行動 です。

「この殿わたらせたまへれば」の解釈です。「この殿」は、前の部分が書かれていないでの、ここでは誰か分かりませんが、教科書などには注がついていて、「藤原道長」のことを指します。「わたらせたまへれば」は、「わたら」がラ行四段活用動詞「わたる」の未然形、「せ」が尊敬の助動詞「す」の連用形、「たまへ」が尊敬語の補助動詞「たまふ」(ハ行四段活用)の已然形、「れ」が完了の助動詞「り」の已然形、それに接続助詞「ば」がついているものです。「わたる」は重要単語で、「1 移動する/経過・通過する、2ずっとーーし続ける、3一面にーーする」という意味です。 ここでの「わたる」の意味は「移動する」が良さそうですが、「道長が二条邸に移動する」ではしっくりいかないので、「道長が二条邸にやってくる」などと訳したい ですね。 「せたまへ」は二重尊敬(最高敬語)になっています 。「やってくる」を尊敬語にすると「いらっしゃる」となります。以上をまとめると「この殿(道長殿)がいらっしゃったので」となります。

叔父である道長が急に二条邸きたので、道隆一家は大変驚きます。というのも、 道長と伊周はもはや政敵です。仲だって当然悪いわけです。そんな人が急に家に来るなんて、通常はありえないのです 。そのような事情から、中関白殿(道隆)は、「思ひかけずあやしとおぼし驚き」になるわけです。この文の解釈は、「思いがけず妙だと、中関白殿(道隆)は心の中で驚きなさって、」となります。

あそばししに」 の「あそばし」は尊敬語の動詞です。尊敬語は「動作をする人」への敬意ですから、誰が「遊んだ」のを考えます。もちろん、「帥殿(伊周殿)」です。この文章はすべて大宅世継が話している部分になるので、 「大宅世継の帥殿に対する敬意」 となります。

「わたらせたまへれば」 の「せ」は尊敬の助動詞「す」の未然形、「たまへ」は尊敬語の補助動詞です。二重尊敬になってはいますが、どちらも尊敬語なので、敬意の方向は同じです。「動作をする人」つまり、誰が「渡った」のを考えます。直前にある「この殿(道長殿)」です。よって、 「大宅世継の道長殿に対する敬意」 となります。

同様に 「おぼし驚きて」 も考えます。「動作をする人」つまり、誰が「驚いた」のかというと、これは中関白殿(道隆殿)です。よって、 「大宅世継の中関白殿に対する敬意」 となります。

まづ射させたてまつらせたまひけるに、 (訳)はこちら(タップで表示)

(中関白殿が道長殿を)先に射させ申し上げなさった時に、

ここも、中関白殿が道長殿に気を遣った行動です。「まづ」は現代語でも使います。漢字で「先づ」ですね。「射させたてまつらせたまひけるに」は、一気に解釈する必要があります。「射」がヤ行上一段活用動詞の未然形、「させ」が使役の助動詞「さす」の連用形、「たてまつら」が謙譲語の補助動詞「たてまつる」の未然形、「せたまひ」は二重尊敬で、「せ」が尊敬の助動詞「す」の連用形、「たまひ」が尊敬語の補助動詞「たまふ」の連用形です。それに、過去の助動詞「けり」の連体形が続き、その後に「時」を補って、 「射させ申し上げなさった時に(なさったところ)」と訳ができる わけです。

次に、人物関係を補って敬意の方向を考えます。「先に射させる」という意味ですから、「中関白殿が道長殿を先に射させる」という意味だと考えるのが自然でしょう。ここに「たてまつら」という謙譲語の補助動詞と「たまひ」とい尊敬語の補助動詞が加わっています。「使役」の助動詞が入っているのでややこしくなりますが、「誰がさせたのか」「誰にさせたのか」を考えると、尊敬語と謙譲語は分かります。「誰が」は「中関白殿が」、「誰に」は「道長殿に(を)」になりますので、前者が尊敬語、後者が謙譲語の敬意の方向です。よって、 「たてまつら」は「大宅世継の道長殿への敬意」、「たまひ」は「大宅世継の中関白殿殿への敬意」となります 。「大宅世継」になる理由は1つ上の項目で記しています。

御前にさぶらふ人々 (訳)はこちら(タップで表示)

おそばにお控え申し上げる人々(中関白殿にお仕えしている人々)

「御前」は「おまえ」 または「おんまえ」と読みます。「前」にわざわざ尊敬語の「御」がついているわけですから、「貴人や神仏の前」という意味になります。 「貴人」とは、もちろん「中関白殿」になります 。次に、「さぶらふ」です。「さぶらふ」は語源が「さ守らふ(さもらふ)」だという説があります。「ふ」は反復・継続を表し、「そのように見守り続ける」ということから、「貴人にお仕えする」という意味になったと考えるわけです。敬語の種類としては謙譲語です。そして、その謙譲語の意味から「仕える」という意味が徐々に取れて、丁寧語に変化し、「あります/おります」という意味になります。さらに、補助動詞にもなって「〜です/ます」という意味も出てきます。ここは、「御前に」とあるので 謙譲語の「お仕えする」とするのがよいでしょう 。

「いま二度延べさせたまへ。」 (訳)はこちら(タップで表示)

「もう二回延長なさいませ。」

ここで問題となるのは、なぜ中関白殿が「二度延長しなさい」と言ったかということです。これは、二つの考え方があります。一つは、道長に「負けろ」と、もう一つは「引き分けにせよ」とメッセージを送っているという考え方です。なぜそうなるかというと、「二度」というのが、矢を「二回」放つのか、それとも「四回」放つのかという二つの考え方によるからです。「四回」になるのは、通常矢は「一度」で「二回」放つのが競射のルールだからだそうです。道長と伊周の差は「二つ」なので、道長に四回放って全て外せと伝えているわけです。そうすると伊周が勝ちますよね。これが数字の通り「二回」だったとしても、道長が二回外したら同点になります。いずれにしても、中関白殿たちは道長に、 「伊周に負けさせないように配慮しなさい」 と訴えかけているということが分かるのです。

次に、敬意の方向です。「いま二度延べさせたまへ。」は会話文なので、誰が話しているのかも考える必要があります。話しているのは「中関白殿(・候ふ人々)」です。次に「させたまへ」は「させ」が尊敬の助動詞、「たまへ」が尊敬語の補助動詞ですが、どちらも尊敬語なので、「誰が延長する」のかを考えればよかったですね。実際に「延長する」のは「道長殿と帥殿」ですが、実際には道長殿を中心に話しているので、 「中関白殿(・候ふ人々)の、道長殿(・帥殿)に対する敬意」 となります。ここはそれぞれ2人の人を書いていますが、テストを受ける際は授業での解説に従ってください。

やすからずおぼしなりて、 (訳)はこちら(タップで表示)

(道長は)不愉快だとお思いになって、

「やすからず」 は、漢字で「安からず」書きます。つまり「不安だ・心が落ち着かない」という意味です。そのために 「心穏やかでいられない・いらいらする」 という意味にもなります。要するに、今でいう「ムカつく」というやつですね。せっかく勝ったのに、 伊周を負けさせないでやれと言われていらいらしている道長殿の様子 が見えます。

文学史・文学作品の確認

今回の「南院の競射」(弓争い・競べ弓)は『大鏡』の一節です。『大鏡』は別ページで詳しく解説しているので、そちらをご覧ください。ここは要点だけを板書で上げておきます。

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練習問題(一問一答&文法問題)

読解一問一答 5選

帥殿(伊周)・中関白殿(道隆)・この殿(道長) 伊周と道隆は親子、道長は道隆の弟(道長は伊周の叔父)

兄弟だとはいえ、政敵である道隆の家にやって来ることは、通常ではありえないことだから。

中関白殿が道長殿を先に射させ申し上げなさった時に、

伊周を負けさせないように配慮しなさいと道長に配慮を要求している。

文法の確認(敬語の練習問題)

帥殿の南院にて人々集めて弓 ①あそばし しに、この殿渡らせ ②給へ れば、思ひかけずあやしと、中関白殿 ③思し驚き て、いみじう饗応し④ 申さ せ ⑤給う て、下﨟に ⑥おはしませ ど、前に立て⑦ 奉り て、まづ射させ⑧ 奉ら せ ⑨給ひ けるに、帥殿の矢数、いま二つ劣り ⑩給ひ ぬ。

①世継から帥殿へ ②世継から道長殿へ ③世継から中関白殿へ ④世継から道長殿へ ⑤世継から中関白へ ⑥世継から道長殿へ ⑦世継から道長殿へ ⑧世継から道長殿へ ⑨世継から中関白殿へ ⑩世継から帥殿へ

中関白殿、また御前に⑪ 候ふ 人々も、「いま二度延べさせ ⑫給へ 。」と⑬ 申し て、延べさせ ⑭給ひ けるを、安からず ⑮思しなり て、「さらば、延べさせ ⑯給へ 。」と ⑰仰せ られて、

⑪世継から中関白殿へ ⑫中関白殿(・御前に候ふ人々)から道長殿(・帥殿)へ ⑬世継から中関白殿へ ⑭世継から中関白殿(・御前に候ふ人々)へ ⑮世継から道長殿へ ⑯道長殿から中関白殿へ ⑰世継から道長殿へ

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