創造法編集社
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ピタゴラスにとって数とは比的なものです。たとえば2:1などの数(アリスモス)の関係です。音楽において数の比が調和(ハルモニア)に関係していることを発見し、音楽以外にも、つまり万物にも数が関係しているのではないかとピュタゴラスは考えていきます。

ピタゴラス(Pytagoras,紀元前570~前496年頃) :・紀元前6世紀頃活躍したとされるギリシャの哲学者、数学者。サモス島(ギリシア南東部)生まれ。前530年頃に南イタリアのギリシャ植民市であるクロトンに移住し、この地で活躍した。イオニア学派の哲学を学んだとされている。ピタゴラス教団という宗教団体を結成した。数を万物の根源と考えた。ピタゴラスの定理、ピタゴラスの音階、無理数の発見などで知られている。ピタゴラスともいう。南イタリアで学校を開いた。・一冊の書物も残さなかった

「ギリシャの哲学者、数学者。ピタゴラス教団という一種の宗教団体を結成し、南イタリアで貴族主義の党派の中心となる。数を万物の根本物質と考え、永遠の真理を教える手段として数学や音楽を重視。業績として、形象数、完全数、友愛数、数の比例の研究や、ピタゴラスの定理、無理数の発見、ピタゴラスの音階などが挙げられる。」

「ビジュアル図解シリーズ、哲学」、PHP、32-33P

「またピタゴラスについては,オルフェウス教との関係あるいはそれと関連して霊魂不滅説ないし輪廻説がしばしば取沙汰され,さらにはプラトン思想へのその影響が指摘されているが,それらはいずれも憶測の域を出ず,正確なところはわかっていないようである.これはピタゴラスが一冊の書物をも残さなかったということと関連があるであろう.」

小坂国継「初期ギリシア哲学者の実在感」,30P

ピタゴラス派とは、意味

ピタゴラス学派 :・ピタゴラスによって創設された古代ギリシアの哲学の一派。ピタゴラスの他に、フィロラオスやアルキタスなどが知られている。

アリスモス(数) 数と数比、調和の関係 アリスモス(数)とは、意味

アリスモス( ἀριθμός ) :・日本語でいうと数。英語表記では「arithmos」。ただし、単なる記号や単位としての数を意味しない。ピタゴラスにおいて 数(アリスモス)と数比(ハルモニア)は同一のもと考えられている 。 数はそれ自体として比的なもの 。ピタゴラスは数と数比、つまり「数学の原理」をあらゆるものの根源、原理だと考えた(万物の根源は数)。数学の原理において数こそ第一のものであり、数こそ存在の原理であり、生成の原理であると考えられている。つまり、万物は数から構成され、数によって変化すると考えられている。アリトモスとも読むらしい。

・数はそれ自体として比的なもの。ピタゴラスは数と数比、数学の原理、法則をあらゆるものの根源、原理だと考えた(万物の根源は数)。数こそ第一のものであり、数こそ存在の原理であり、生成の原理であると考えられている。つまり、万物は数から構成され、数によって変化すると考えられている。

数比とは、意味

数比(すうひ) :・数と数の間の比例関係、比的関係。とりわけ自然数の間の関係を意味する。自然数m:自然数n、あるいは整数m:整数n。ピタゴラスはあらゆるもの(万物)が数比的関係、調和のうちにあると考えた。また、調和が成り立つということは比例関係にあると考えられていた。ピタゴラスにおいてはシンメトリーというよりも「通約可能性」という意味合いがある。たとえばアリストテレスは「正方形の対角線は通約的であるということは不可能である」といような言い方をしているが、これは「(自然数の)比例関係」にないということを意味する(平方根などの無理数を使わないといけない)。

「数と数比とは基本的に同一のものとして捉えられる、という点にまず注意しておこう。数はそれ自体として比的なものである。」

杉村立男「ピタゴラス的合理主義の伝統」,86P

「数比とは整数m:整数nである。この段階では整数というより自然数というべきであるが、ある調和が成り立つということはこのような比的関係のうちにあるということであると理解されていた。それは例えば前述のようにハルモニアー、和音がまさにこのような比的関係であるということと同一のことがらである。すなわち数学的調和はそのまま音楽的調和であり、宇宙全体の調和である。ポルピュリオス「ピタゴラスは、諸天圏とそこを運動する諸星の全般的な調和〔音階〕を理解していたので、我々はその本性が貧弱なために聞くことが出来ないけれど、彼自身は全宇宙の調和(=音楽、引用者)を聞いた。」8)(3~4世紀」

杉村立男「ピタゴラス的合理主義の伝統」,87P

「アリストテレスも『形而上学』において「『正方形の対角線はその辺と通約的である』ということは不可能であるといわれるが、…」4)、「およそ数は共通の単位で計られうるものすなわち通約的なものであり、…」5)といった用い方をしている。エウクレイデス『原論』でも「同じ尺度によって割り切られる量は通約できる量(シュムメトラメゲテー)といわれ、いかなる共通な尺度ももちえない量は通約できない量(アシュムメトラメゲテー)といわれる。」6)そしてピタゴラス的合理主義における比例とは本来この通約的な関係、すなわち比は常に整数m:整数nのかたちで表現できるはずのものであった」

杉村立男「ピタゴラス的合理主義の伝統」,86P

ハルモニアとは、意味

ハルモニアー(harmonia) :・ギリシア語で「調和」を意味する。ピタゴラスにおいて重要な概念。ハーモニー(和声)はこのハルモニアに由来する。ピタゴラスは宇宙(コスモス)は調和と秩序を本質としていると考えた。宇宙が調和しているということは、数比的な調和を意味する。ピタゴラスにおいてハルモニアは音階、和音、調和など多義的な意味があり、数学的調和は音楽的調和、世界(宇宙全体)の調和につながると考えられていた。

ロゴスとは、意味

ロゴス(logs) :・ギリシア語のロゴスという言葉は、レゲインという動詞に由来している。レゲインには「選ぶ、選り分ける」という意味と、「数える」という2つの意味がある。「選ぶ」からは「言明、文、命題、説明、主張、表現」などが、「数える」からは「算定、測定」などの意味が出てきたという。ギリシャ哲学においては神話的な物語風の説明(ミュトス)と対比させ、「 合理的な討論にゆだねられ検討対象とされるものについて説明する言葉 」という意味合いになっていったという。筋道だった法則。パトス(感情)の対義語。合理的に事物を定義し、説明し、論証するような理性や理法、準則を意味する。ロゴス≒理性≒合理。

ピタゴラスにとって数の比がハルモニア(調和)を生むと考えられていた。ロゴスには合理的、理性的という意味があり、そして合理、理性という言葉はもともとラティオ(ratio)という「比」という意味合いがある。要するに、 合理的、理性的、ロゴス的であることは数比的であり、そして調和的であること になる。

→英語で合理的、理性的を意味する言葉は「rational」。

「さて、「ロゴス」(……)という語のほうですが、これは「レゲイン」(……)という動詞に由来します。「レゲイン」には基本的に二つの意味があります。一つは「選ぶ」「より分ける」のそれであり、他は「数える」のそれであります。第一のものからは「言明」「文」「命題」「説明」「主張」「表現」等々の意味が出てき、第二のものからは「算定」とか「測定」とかの意味が出てくることになりました。「ロゴス」のこれら二つの基本的な意味のうち、重要なのは第一のもので、とりわけ「説明」としてのそれが、ギリシア哲学者の場合には最も重要なものとなっていきました。そして、「説明」としての「ロゴス」は、とりわけ、空想やイマジネーションを交えた「物語」風の「説明」としての「ミュトス」(神話)との対比においては、「合理的な討論にゆだねられ検討対象とされるものについて説明する言葉」という意味合いをもつこととなっていきましたが、この意味こそは、わたしたちの論題である「コスモロジー」という合成語に結晶しているものであると言うことができます。」

山川偉也「古代ギリシアのコスモロジー : 西洋思想史講義ノートより」,308-309P

理性とは、意味

理性(ギリシア語:nous,ラテン語:ratio,英語:reason) :・

合理的とは、意味

合理的、理性的(読み) :合理的という言葉も理性的という言葉も、原語はラテン語のラティオナリスムス、ラティオナーリスという言葉であり、どちらもラティオ(ratio)に由来している。そしてラティオとは「比、割合」という意味であり、源は古代のギリシャ数学、幾何学、ピタゴラスの数理主義にあるといわれている。

ピタゴラスの定理

ピタゴラスの定理:説明直角三角形の直角をはさむ2辺の長さをa,b,斜辺の長さをcとするとき、等式a 2 +b 2 =c 2 が成立する。三平方の定理、勾股弦の定理ともいう。

例題1

ピタゴラスの定理により、3 2 +2 2 =C 2 になる。したがって、9+4=C 2 となり、13=C 2 になる。つまり、C=√13になる。

コラム:√ってなに・・・・?

平方根であるとは。「数に対して、平方すると元の値に等しくなる数のこと」になる。数 a に対して、x 2 = a を満たす x を a の平方根という。

有理数と無理数 有理数とは、意味

有理数(Rational number) :・一般に、整数と分数をあわせた数のすべてを有理数という。有理数は、整数の商で表される数、すなわち、mを0でない整数、nを整数としてn/mの形に書かれる数である。有理数には、正・負の整数、分数と0が含まれる。有比数と訳した方がいいと考える人もいる。

無理数とは、意味

無理数(Irrational number) :・一般に、有理数でない実数を無理数という。円周率πや自然定数の底eなど。

無理数の存在を隠したかったピタゴラス。なぜ?

・ピタゴラスの考えでは世界は数、特に自然数(有理数、整数)の数比で構成されており、調和を保っている。しかし、自然数ではない数、すなわち非調和的、非合理的な数が存在することが判明してしまった。数の本質は比的なものという根本的な説が危うくなった。→世界には自然数で説明できない現象があることがわかったが、ピタゴラスはそれを隠そうとしたらしい。

「ピタゴラス教団が歴史的な実体としてどういうものだったのかよくわからないところもありますが、彼らは音楽と数に神秘的なつながりがあると考え、そこに合理性、世界の理性の働きを見ようとしたわけです。しかしなが、話はここで終わらない。『比で表すことができる』という合理性の原理から考えたときに、まさにその原理から始めたがゆえに、西洋の理性は、実は比で表しえないものが世界の中に必ずある、ということを発見してしまうのである。その発見をもたらしたのが、皮肉にもピタゴラス教団なのです。」

大澤真幸「社会学史」,322P

「X 2 =2・・・・・・①。ご存知のように、このxは分数になりません。つまりXは、どのような自然数の比にもならないのです。合理性とは、自然数の比であるという見方を前提にすると、合理的な世界の把握のうちに収まらないものが存在している、ということになります。ですから、この比には回収できない数字xが存在しているということは、ピタゴラス教団にとっては、自分たちの基本的な教義を否定するスキャンダラスな事実でした。……さて、この問題は、自然数やその比によって定義できる数字(分数)とは異なる別種の数字、つまり『無理数』を導入することで解決されているわけです。①の方程式の解は、『√2』である、というぐあいにです。」

大澤真幸「社会学史」,323P

「世界のすべての現象や世界のすべての存在の本質原理が整数やその組み合せで説明できると考えるピタゴラス学派にとって,図形の性質を研究するうちに整数では説明できない事象に行き着いたのはなんとも皮肉な事態であった。「ピタゴラスの定理」によると長さが1の等辺直角三角形の斜辺の長さは冴という,まさしく無理数(不合理な数)となってしまうのである。ピタゴラス学派は√2(2乗して2となる数)が整数の比で表わせる数(有理数=合理的な数)ではないことを実際に証明してしまった。秘密結社ピタゴラス学派はこの不測の事態に直面して,ピタゴラスの定理の正当性を疑う道を選ぶでもなく,整数が世界を支配しているという根本思想を覆す道を選ぶでもなく,斜辺が√2になってしまうというこの事実を封印して決して人見に触れないように隠し通す道を選ぶ。(ピタゴラス学派はこの事実を秘密結社外に漏そうとした者を処刑したとも伝えられている。)整数の原理や規則性が音楽の原理や規則性を完壁に説明できることを発見したピタゴラス学派にとって,世界のあらゆることも整数の規則性や原理で説明できるに違いないという確信は相当に強いものであった。それに矛盾する事実は封印しなければならない」

岡田,光弘 「歪んだ真珠(バロック) : 音楽における規則性vs反規則性, またはロゴスvsパトス」,124P

万物存在論・生成論 万物は数であるとは、意味

「万物は数である」 :・万物は数によって構成され、数によって変化すると考えること。万物の生成の原理は特に「数比」によって明らかにされると考えられている。

  1. 音楽における協和音(ピタゴラスの音律)
  2. 天体の規則的な運行
1:音楽における協和音(ピタゴラスの音階)

ピタゴラス音律 :・弦の長さの比から協和現象を認めた理論。ピタゴラスが考えたといわれている。純正5度を積み重ねていって構成するという。中国でも三分損益法として音階理論が作られていたという(弦ではなく律管)。どちらが先かは諸説あるという。

音楽用語整理

音程:ふたつの音の関係、隔たりのこと。異なった3個およびそれ以上の音が同時に響いたとき、これを和音(コード)という。

オクターブ:西洋音楽における8度音程であり、周波数比2:1の音程。周波数が2対1の比率をもつ二つの音の音程関係。聴感上は同一音とさえ感じられ、同一音(完全1度音程)に次いでもっとも調和する音程。調和する音を「協和音」という。。

周波数:「1 秒間の振動数」を意味する。振動数が細かい(多い、高い)ほど音が高くなる。ものすごく高い声を出せば薄いワイングラスが割れることもある(グラスは高い音と共振する)。

音の調和には数が関係している、それゆえに数は調和に関係し、数は万物の存在・生成に関与している

音が調和する法則があり、その法則は「数とその比」が重要。→調和には数が関係していて、特に自然数(1,2,3….と数えられる正の整数)による数比が関係していると考えられた。

・この発想から、音だけではなくすべてのもの」は数から構成され、数によって変化し、自然数(整数)の数比によって調和すると考えるに至った。つまり、「万物は数である」ということ。同時に、三平方の定理(ピタゴラスの定理)によって自然数ではない数字(無理数)が物事を構成する要素となることも分かってしまったが、ピタゴラスはそれを隠そうとした。

・ハンマーの話

「ハルモニア論の出発点はピタゴラスにある。古代ギリシアの時代において彼は、2つの音をつくりだす弦の長さの比、近代以降でいう振動数比が、数的に単純な比になっているほど協和して感じられること、複雑な比になっているほど不協和と感じられることを見出したとされている(伊藤氏報告論文p.62)。そしてこの発見にピタゴラスが至った経緯として、次のような言い伝えが今日でも知られている。鍛冶屋の仕事場の前を通ったピタゴラスが、金床を打つハンマーの音が互いに協和しているのを聴き取った。彼がそれらのハンマーの重さを調べたところ、重さの比が2:1であればオクターヴ(完全8度)、3:2であれば完全5度、4:3であれば、完全4度の協和音が生じることを解明した、というもの(1)である。このエピソードの真相はともかくとして、ピタゴラス派の人々は、ピタゴラスのハルモニア論を語り継ぎ、それを数学の一分野として発展させた。完全8度、完全5度、完全4度の3つの音程を、協和音(consonance)としたのである(2)。」

森薫「身体性の復権へ― 作曲の実践としてのハルモニア論を踏まえて ―」,110P

「ハルモニアーは我々から見ると絶妙な意味に用いられており、いわばこの点にこそピタゴラスの教説の要点がある。それは音階、和音、調和であるが、単に音楽の問題なのではない。すなわち、弦楽器において音階を定めていくのは、開放弦を単純な整数比m:nで分割していくと同時に、二本の弦を共に奏でたときに和音になるかどうかも、その二本の弦の長さの比が単純な整数比であるかどうかによって決まる。オクターヴ(8度)1:2,4度3:4,5度2:3。これもまたピタゴラス派の発見に帰せられる。そしてこのような数比的調和によって宇宙が満たされていると同時に、調和しているということはこのような数比的関係のうちにあるということとされるのである。」

杉村立男「ピタゴラス的合理主義の伝統」,86P

2:天体の規則的な運行

「この構想はいわゆる三法則も含まれる『世界の調和』(ハルモニケースムンディー1619年、=『宇宙の和声学』)のうちにもそのまま持ち越されている。ケプラーにとっては、幾何学、天文学、音楽、人間精神等が全体として重なり合い、同一のものとして宇宙の調和的秩序をなしている。これはもちろん基本的枠組みにおいてピタゴラス的合理主義そのものであり、例えば「音楽と天文学の巧者たち(ピタゴラス派、引用者)が言うところによると、これらすべて〔全天〕は一種の調和を奏でつつすべてが同時に回転しているのだそうだからね」37)といったプラトンの著作を経て、伝えられた思想である」

杉村立男「ピタゴラス的合理主義の伝統」,97P

「ピタゴラス学派(BC6-5世紀) が考えた宇宙観は(1)地球は球形であり、(2)宇宙(コスモス)の 中心にあり、(3)その周りを惑星や恒星が同心円状に取り囲んでいるといったものでした。 「宇宙」という概念を最初に提唱し、幾何学的な思考を自然科学に適用し、 円や球といった「調和のとれた図形」が自然界を記述すると考えました。 また、天体の運動は「調和」がとれた状態を維持するために、等速円運動であると考えました。 この考え方は、これ以降の「地球中心説」の基本を構成することになりました。 ……この時期、様々な宇宙論が提出されました。フィロラオスの宇宙は、地球と、 日、月、火、水、木、金、土といった肉眼で観測できる天体、さらに ここへ中心火と反地球を足した10個の天体でこの宇宙は恒星されていると考えました。 中心火と反地球は哲学的なものであり、実測し確認したわけではありません。 太陽系の天体の数を”10=1+2+3+4”と表せるように人為的にこしらえたのです。」

出典

「ピロラオスによると、世界の中心には炎があり、最も高い場所ではさらなる炎が世界全体を囲っている。世界の本質として、まず中心が成り、その周りを10の神聖な天体が舞い回るー空、5つの惑星、太陽、月、地球、反地球があり、最後に世界の中心を占める暖炉の炎があると言う。周囲を覆う最も高い場所では、元素は純粋な状態にあり、彼はそこをオリンポスと呼んだ。オリンポス軌道より下の領域には、太陽と月をともなって5つの惑星があり、彼はそこを世界と呼んだ。さらにその下、月軌道の内側には地球を取り囲み変化と生成をもたらす場所があり、彼はそこを空と呼んだ。—ストバイオス, i. 22. 1d」

「フィロラオスまたはピロラオス(希: Φιλόλαος、Philolaos、紀元前470年頃 – 紀元前385年)は、ピタゴラス教団の一員、数学者であり、ソクラテス以前の哲学者である。万物は無限なるもの(無限定)と有限なるもの(限定)により生じるものをその基礎としており、両者は調和をもって結びついていると説いた。地球が宇宙の中心ではないという考えを述べた最初の人物であるとされる。」

出典

その他 宇宙をコスモスと呼んだ最初の人

「ピタゴラスは宇宙を,秩序と調和という意味をもつコスモス(κόσμος)と呼んだ最初の人である.この点についてアエティオス(Aetios1世紀頃)は「ピタゴラスは,万物を包み込むものを,そのなかにある秩序にもとづいてコスモスと名づけた最初の人であった」(『断片集』第2部第14章21)といっており……」

小坂国継「初期ギリシア哲学者の実在感」,30P

「アエティオス「ピタゴラスは、万有を包み込むものをその中にある秩序にもとづいてコスモス(秩序体)と名づけた最初の人であった。」14)もしそうだとすれば世界の秩序、すなわちよく配列されていること、が幾何学的なものであると考えられていたことは間違いない。」

杉村立男「ピタゴラス的合理主義の伝統」,90P

哲学という語をはじめて使った人

「しかし、ピタゴラスが最初に「哲学」と名付け、自身を哲学者と呼んだ。」(第一巻一二節)こうして哲学の系譜はギリシア人の中で辿られるが、その始まりはアナクシマンドロスとピタゴラスの二人におかれ、前者からイオニア派が、後者からイタリア派が発したとされる。」

納富信留「始まりを問う哲学史――複眼的ギリシア哲学史への試み」,53P

「ピタゴラスに哲学の始まりを帰す見方は、「哲学者φιλόσοφος」という語を彼が初めて語ったとの伝承による。他の候補が哲学という営みの始まりとされるのとは異なり、彼の場合は「哲学、哲学者」という概念の創始が主な理由となる。ディオゲネス・ラエルティオスはピタゴラスを「イタリア派」の系譜の祖に位置づけている。」

納富信留「始まりを問う哲学史――複眼的ギリシア哲学史への試み」,54P

霊魂不滅説(輪廻転生説、オルフェウス教との関連)

オルフェウス教(Orphism) :・古代ギリシアの密儀宗教。紀元前7世紀ごろから前5世紀ごろに栄え、とくに南イタリアのギリシア植民としやシチリア島で広く信仰されたという。伝説上の詩人であるオルフェウスが創始者だといわれている。プラトンなどに影響を与えたとされている。霊魂不滅説や輪廻転生を特色としている。

霊魂不滅説 :・オルフェウス教では肉体は牢獄であり、魂は永遠不滅の本質であると考えられている。ギリシア神話の神であるザクレウスが悪神タイタンによって食べられ、タイタンはゼウスによって焼き殺され、その灰から人間が作られたという話が信じられている。悪神タイタンの灰から肉体は作られたため、それらは牢獄となったが、その中にはザクレウスの破片である不滅の神的な霊魂が閉じ込められていて、神界へ帰りたがっているという。オルフェウス教の目的は過去の罪によって肉体に幽閉されている魂を救済することにあり、肉食を避けたり、清めの儀式などを行う。

輪廻転生(りんねてんせい) :・人生が終わった後、霊魂から肉体が離れ、ハーデースの冥府に下って審判を受け、生前の善い行い、悪い行いに応じて別の人間や動物の肉体のうちに再び宿るという説。

「またピタゴラスについては,オルフェウス教との関係あるいはそれと関連して霊魂不滅説ないし輪廻説がしばしば取沙汰され,さらにはプラトン思想へのその影響が指摘されているが,それらはいずれも憶測の域を出ず,正確なところはわかっていないようである.これはピタゴラスが一冊の書物をも残さなかったということと関連があるであろう.」

小坂国継「初期ギリシア哲学者の実在感」,30P

「けれどもよく考えてみるとオルフェウス教のいう『輪廻転生』は、この人生の終わったあとで霊魂が肉体を離れ、ひとまずハーデースの冥府に下って審判をうけ、生前の善業悪業に応じてふたたびべつの人間や動物の肉体のうちに宿るというものであるから、時間の円周性とはいちおう別のものである。このような因果応報のおしえと、出来事がある周期をもっていわば機械的に回帰するというピタゴラス学派の観念とのあいだには、時間意識のある確実な断層があるし……」

見田宗介「時間の比較社会学」,178-179P

「この学校は、研究機関というより一種の宗教団体で、その教義の特徴は、『魂は不滅で輪廻転生する』というものでした。ピタゴラスたちにとってもっとも重要なことは、不滅の魂の浄化であり、目には見えない数とその調和が世界を成り立たせていると考えることは、肉体からの魂の解放にもつながるものでした。」

「ビジュアル図解シリーズ、哲学」、PHP、32-33P

「ピタゴラス学派の根本思想は,万物の本質は数であるというもので,それゆえこの派の層々は皆紅学者であり,また天文学や音楽に通じていました。これら学問や技芸の根底にあるものは,やはり数の理念であるからです。また,ピタゴラスは前世の記憶を有していたと言われるところがら,入綾の魂は本来神々と共にある不死の存在なのだがこの世では肉体という濫に閉じ込められており,肉体の死と共にここから分離して冥府へ行き,ここで浄化され,再度他の肉体へ入るのであるという,ピタゴラス学派の霊魂観が生まれたもようです。プラトンの想起説は,ピタゴラス学派の輪廻転生説に多くを負っています。」

青山太郎「西洋文学における変身のテーマ」、3P

社会学との関連 貨幣と数の関係

貨幣の特質 :・事物を「量」として換算し、それ以上分解できない単位を基礎とする「数」として表現すること。

「世界のすべての事物をあたかも貨幣による価値づけのように数量としてとらえるということは、ピタゴラス学派においていっそう徹底される。ピタゴラスはアナクシメネスとほぼおなじころに、ミレトスの経済的なライヴァルであったおなじイオニアのサモスに生まれ、四十歳のころにイタリアの繁栄した商業都市クロトンに移住している。セルトマンによればピタゴラスはそこで、名高い彼の教団を創設するとともに、貨幣を鋳造しはじめた。この教団はやがて周辺のいくつかの繁栄した都市で政治的支配権を獲得する。そしてそれらの都市のいくつかにも、クロトンの鋳貨と同型の意匠をもった鋳貨があらわれはじめる。前六世紀の後半である。これらの鋳貨がピタゴラス教徒の造ったものであるということについては反論もあるが、慎重にみても、これらの地方で最初の鋳貨があらわれた時期と、ピタゴラス教団が広範な共鳴をえた時期とが重なるという事実は残る。鋳貨の特質は、とりわけその初期の素朴な鋳貨システムの特質は、事物を量として換算するのみではなく、それ以上分解しえない単位を基礎とする数として表現することである。というピタゴラス学派の根本テーゼは、このような生活世界に基礎をおく宇宙了解であるように思われる。」

真木悠介「時間の比較社会学」,176-177P

時間意識と輪廻転生:円環としての時間

・ギリシャの「円環としての時間意識」が最初に生まれたのはアナクシマンドロスの哲学。「みずから発生してきたところの元のもとへ、もう一度帰ってゆくのが定めである」とアナクシマンドロスは述べた。アナクシマンドロスは万物の根源を「ト・アペイロン(無限定なもの、無限なもの)」と述べたのもポイント(なぜなら円環する時間も無限に循環するから)。

・ピタゴラス学派には「出来事がある周期のなかで回帰する」という時間の教えがある。

・エムペドクレスはミレトス学派とピタゴラス学派の両方から学び、「一つのものと多のものが時の円環のまわるにしたがって優勢を占める」と表現する。

・オルフェウス教的な時間意識がヘレニズム文明以前の時間意識(反復的な時間)であると仮定するとわかりやすい。過去は潜在する現在。

「そして円関する時間のイメージをいっそう明確に把持したのは、『出来事がある周期のなかで回帰する』ことをおしえたピタゴラス学派のひとびとであり、アナクシマンドロスらのミレトス学派とピタゴラス学派双方の発想をうけたエムペドクレスのつぎのような表現において、円環する時間のイメージは完成される。『一つのものと多のものが時の円環のまわるにしたがって優勢を占める。』」

真木悠介「時間の比較社会学」,166-167P

「ピタゴラス学派についてはこのような汎数主義とならんで、オルフェウス教の影響がよく知られている。……このような因果応報のおしえと、出来事がある時期をもっていわば機械的に回帰するというピタゴラス学派の観念とのあいだには、時間意識のある確実な断層があるし、エムペドクレスの<時の円環>というふうにいっそう抽象化された時間のイメージは、オルフェウス教に還元しつくことはできない。オルフェウス教自体はむしろ、固有の意味でのヘレニズム文明以前の、農耕共同体の時間感覚を基礎としている。この時間感覚が、ヘレニズム文明の客体化し数量化する、したがってまた抽象的に無限化していくロゴスと出会った時に、その交叉するところに必然に生まれてくるのが、円環としての時間イメージであったのではないか。円形はギリシャの人間が無限を表象するときの形式であった。はるかな原始共同体にまで通底するオルフェウス教の生死の反復する感覚が、数量化するロゴスによって対象化されたときの形象が、ヘレニズム的な時間の円環であったはずである。」

真木悠介「時間の比較社会学」,178-197P

参考文献 参照論文(論文以外を含む)
  1. 小坂国継「初期ギリシア哲学者の実在感」(URL)
  2. 山川偉也「古代ギリシアのコスモロジー : 西洋思想史講義ノートより」(URL)
  3. 杉村立男「ピタゴラス的合理主義の伝統」(URL)
  4. 納富信留「始まりを問う哲学史――複眼的ギリシア哲学史への試み」(URL)
  5. 森薫「身体性の復権へ― 作曲の実践としてのハルモニア論を踏まえて ―」(URL)
  6. 青山太郎「西洋文学における変身のテーマ」(URL)
  7. 岡田光弘 「歪んだ真珠(バロック) : 音楽における規則性vs反規則性, またはロゴスvsパトス」(URL)
主要文献 「時間の比較社会学」 汎用文献 「哲学 雑学3分間ビジュアル図解シリーズ」 「哲学用語図鑑」 「本当にわかる哲学」 「史上最強の哲学入門」 蒼村 蒼村 この著者の最新の記事
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実数直線上の自然数の本性(パラダイムシフト)は、3冊の絵本で・・・ 絵本「哲学してみる」 絵本「わのくにのひふみよ」 絵本「もろはのつるぎ」

数の言葉ヒフミヨ(1234)は、+ ー × ÷ √ = をモトモト持ち合わせている。

  • レンマ学(メタ数学)
  • 2023年 2月 15日

数の言葉ヒフミヨは、言葉の点線面 カタチ(〇△□) 演算記号(+-×÷√=) 数式(方程式) 十進法の基における西洋数学の成果の符号(e i π ∞) 1 0 (菩薩的作用素) 極座標 ⇔ 直交座標 などをウマクウマク纏め上げていよう・・・

  • 岡潔
  • 2024年 6月 05日

≪…数量化するロゴスによって対象化されたときの形象が、ヘレニズム的な時間の円環であったはず…≫を、 「草枕」変奏曲 夏目漱石とグレン・グールド 横田 庄一郎 (著) の三角の世界で、数学の基となる自然数を大和言葉の【 ひ・ふ・み・よ・い・む・な・や・こ・と】の平面・2次元からの送りモノとして眺めると、[数のヴィジョン]の[コンコン物語]になるとか・・・

  • 『ヒフミヨ ヒンメリ』
  • 2025年 1月 03日
  • 自然数の量化
  • 2025年 1月 15日

【 結んで開いて 手を打って 結んで また開いて手を打って、その手を背伸びして重ね 】 と このニ等辺三角形を等辺(3)底辺(2)としてグルッと一周する円錐体は、√8π/3 で、この風景こそ自然数の進む姿だ。 この三角形の『半分こ』の『カタラン直角三角形』(√8 1 3)が、1・2・3・4次元を纏めている。 1 は、π で水平な平面を創生し、 (驚異の定理) 3 は、線(1次元) 面(2次元)を縁起 (関係)付け (『ヒフミヨ ヒンメリ』) √8 は、水平面と垂直面を縁起(関係)付け ( i⁴=1 4次元の1 )

【 結んで開いて 手を打って 結んで また開いて手を打って、その手を背伸びして重ね 一回りしてロケットに 】 と 数の言葉ヒフミヨ(1234)を宇宙へ羽ば立たせタイ・・・

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      目次
      • 1 はじめに
        • 1.1 要約
        • 1.2 動画での解説・説明
        • 2.1 ピタゴラスとは、意味
        • 2.2 ピタゴラス派とは、意味
        • 3.1 数と数比、調和の関係
        • 3.2 アリスモス(数)とは、意味
        • 3.3 数比とは、意味
        • 3.4 ハルモニアとは、意味
        • 3.5 ロゴスとは、意味
        • 3.6 理性とは、意味
        • 3.7 合理的とは、意味
        • 3.8 ピタゴラスの定理
        • 3.9 例題1
          • 3.9.1 コラム:√ってなに・・・・?
          • 3.10.1 有理数とは、意味
          • 3.10.2 無理数とは、意味
          • 3.10.3 無理数の存在を隠したかったピタゴラス。なぜ?
          • 4.1 万物は数であるとは、意味
          • 4.2 1:音楽における協和音(ピタゴラスの音階)
            • 4.2.1 音楽用語整理
            • 4.2.2 音の調和には数が関係している、それゆえに数は調和に関係し、数は万物の存在・生成に関与している
            • 4.2.3 ・ハンマーの話
            • 4.2.4
            • 5.1 宇宙をコスモスと呼んだ最初の人
            • 5.2 哲学という語をはじめて使った人
            • 5.3 霊魂不滅説(輪廻転生説、オルフェウス教との関連)
            • 6.1 貨幣と数の関係
            • 6.2 時間意識と輪廻転生:円環としての時間
            • 7.1 参照論文(論文以外を含む)
            • 7.2 主要文献
              • 7.2.1 「時間の比較社会学」
              • 7.3.1 「哲学 雑学3分間ビジュアル図解シリーズ」
              • 7.3.2 「哲学用語図鑑」
              • 7.3.3 「本当にわかる哲学」
              • 7.3.4 「史上最強の哲学入門」
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