白鳥の湖(チャイコフスキー)
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Peter Ilyich Tchaikovsky, 1840~1893)が作曲したバレエ音楽『白鳥の湖』(Swan Lake)の解説と、お薦めの名盤をレビューしていきます。 解説 …
序奏からとても味わい深い演奏で、 オーボエのソロが素晴らしい ですし、その後のダイナミックな盛り上がりも弦楽器のサウンドが、とてもしなやかです。次の曲もシンフォニック云々以前に、 レーグナーはリズム感はある指揮者 なのでバレエ音楽として十分通用する演奏です。オペラ座のオケではないのに、これだけの演奏が出来ればバレエ音楽として十分だと思います。 特に弦セクションのしなやかさと自然なリズミカルさ は、他のドイツのオケではあまり聴かれない特徴です。このコンビはブルックナーも得意としていますが、スケルツォ楽章が素晴らしいですね。「ハンガリーの踊り」では、前半はかなり遅いテンポですが、後半は一転してリズミカルになります。抜粋ですが、 有名な音楽は一通り抑えていて、音楽の流れも良い選曲 です。
ムーティ=フィラデルフィア管弦楽団 (組曲)指揮 リッカルド・ムーティ 演奏 フィラデルフィア管弦楽団
若い時のムーティの演奏です。『眠りの森の美女』は特に素晴らしいのですが、『白鳥の湖』もかなり良い演奏です。基本的にインテンポ、あるいは速めのテンポで、イメージ通りの演奏をしてくれます。しかも、 筋肉質でバレエ音楽として、リズム感がしっかりしています 。横に流れてしまうことが無いため、多少の演出もバレエ音楽の範疇を出ることはありません。
バレエ的なリズムだけでなく、 ダイナミックでシンフォニックな所も水を得た魚 のように、筋肉質でゴージャスな演奏をしてくれます。しかも、わざとらしい演出は全くないです。「ハンガリーの踊り」は、前半はインテンポなのが好きなのですが、かなり遅いテンポで入り、後半はかなりテンポアップしています。「スペインの踊り」は、目の覚めるような溌剌としたリズムで名演です。「マズルカ」も同様にいい演奏です。
終曲がないのが、一番勿体ないですね。このコンビだったら絶対にいい演奏だったはずと思います。次の曲が『眠りの森の美女』の序奏で、目の覚める様な名演なので、やっぱり『白鳥の湖』は序奏がなくてフィナーレも無いという、選曲ミスだったかも、とも思います。でもいい所の多いディスクです。
レヴァイン=ウィーン・フィル (組曲) 三大バレエのCDが欲しくて、迷ったらコレ!指揮 ジェームズ・レヴァイン 演奏 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
レヴァインとウィーン・フィルの録音です。レヴァインは基本的にメトロポリタン歌劇場のオペラ指揮者です。当然、バレエも上手いです。シンフォニックに積極的に表現していく、というよりは、歌手に歌える場を提供したり、バレエ団に踊れる環境を提供したりするのが仕事なので、わざとらしい余分な表現は不要です。
レヴァインの実力で ウィーン・フィルから色彩的なサウンド を引き出していて素晴らしいです。また、録音の音質が良いことも大事な長所です。それにしても、こもりがちなムジークフェラインでもこんな録音ができるんだなと、感心しました。
組曲そのままなので、ドラマティックな盛り上がりはあまりありませんが、 親しみやすい有名な曲が並んでい て楽しめます。フィナーレは聴きどころで、なかなかのスケールです。ウィーンフィルは思っていたよりダイナミックに演奏していますが、サウンドが汚くなるところはありません。
バーンスタイン=ニューヨーク・フィル指揮 レナード・バーンスタイン 演奏 ニューヨーク・フィルハーモニック
レナード・バーンスタインが若い時のニューヨーク・フィルとの録音です。全曲盤からの抜粋で、組曲とは関係なく自由に抜粋されています。曲数も多いです。これなら、一枚全部『白鳥の湖』を抜粋すればレーグナー盤のように意図がはっきりしていいと思います。
1.第1幕:パ・ドゥ・ドゥ(導入部) 2.第1幕:パ・ドゥ・ドゥ(II.ヴァリアシオン) 3.第1幕:パ・ドゥ・ドゥ(III.ヴァリアシオン) 4.第1幕:パ・ドゥ・ドゥ(IV.コーダ) 5.第2幕:情景:Moderato 6.第2幕:白鳥たちの踊り(I.Tempo di valse) 7.第2幕:白鳥たちの踊り(II.Moderato assai-Molto piu mosso) 8.第2幕:4羽の白鳥の踊り 9.第2幕:オデットとジークフリートのパ・ダクシオン10.第2幕:白鳥たちの踊り(VI.Tempo di valse)11.第2幕:白鳥たちの踊り(VII.コーダ)12.第3幕:情景:Allegro quisto13.第3幕:ハンガリーの踊り14.第3幕:スペインの踊り15.第3幕:ナポリの踊り16.第3幕:マズルカ
フェドセーエフ=モスクワ放送交響楽団 (組曲) 強烈なリズム感!ロシアの土の香りのする名演指揮 ウラディーミル・フェドセーエフ 演奏 モスクワ放送交響楽団
フェドセーエフとモスクワ放送交響楽団の演奏は、ロシアでもトップを争うモスクワ放送交響楽団の機能性もあって、とても優れた演奏です。テンポのメリハリが強すぎて、かなり個性的でもあります。フェドセーエフはバレエ指揮者ではないので、ロジェストヴェンスキーのようには行かないですね。ちなみにCDでは入手できず、MP3ダウンロードのみです。音質はなかなかです。最近の録音だと思います。選曲は組曲ベースですが、終曲は入っていません。
最初の 「情景」は素晴らしい演奏 です。時折現れるロシアの大地を感じさせるような土の香りは他国のオケでは真似できないものです。 「ワルツ」も素晴らしい演奏 です。「4羽の白鳥の踊り」も良いですね。録音が良く適度にエコーがかかっています。「パ・ダクシオン」もソロが素晴らしいと思います。ウィーンフィルなどのほうがもっと繊細な場合が多いですが、十分素晴らしいです。「ハンガリーの踊り」は、前半適度に遅く、 後半は爆速 です。 「スペインの踊り」は最初から最後まで爆速 。「ナポリの踊り」はまあまあです。 「ポーランドの踊り」の鮮やかな演奏はこのページのディスクの中でもトップ ですね。マズルカらしく小気味良く演奏されています。
モントゥー=ロンドン交響楽団指揮 ピエール・モントゥー 演奏 ロンドン交響楽団
モントゥー=ロンドン交響楽団の演奏は、なかなかダイナミックで音質も十分良いです。抜粋ですが、結構沢山曲が入っていて、楽しめそうです。
モントゥーはロシアの指揮者ではありませんが、 『春の祭典』『ペトルーシュカ』などを初演したバレエ指揮者 でもあります。モントゥーの凄さはバレエだけではありませんが、曲の本質をつかんで引き出す能力は凄いものがあります。ロンドン交響楽団は、どうも色彩的なところは金管がダイナミックすぎて品に欠ける時がある気がします。3曲目は第1幕だったような気もするのですが、これは良い演奏です。
カラヤン=ベルリン・フィル (組曲) ロマンティックでスタンダードな演奏!指揮 ヘルベルト・フォン・カラヤン 演奏 ベルリン・フィルハーモニー
カラヤンとベルリン・フィルの演奏は上手いのですが、好みが分かれると思います。とりあえず、ソロは間違いなく上手いです。 とてもロマンティックな表現で、カラヤンらしいゴージャスなレガートを使って、華麗な演奏を繰り広げています 。
しかしシンフォニックすぎ、リズム感もバレエらしくないです。曲によってはコマーシャルなどで聴いたままなので、おおっ、という感じですが、例えば「ハンガリーの踊り」前半は、遅いにしたってやりすぎです。 カラヤンのチャイコフスキー ですね。
選曲も組曲のままですね。 終曲が入っているのは良かったです。 やはりカラヤン=ベルリンフィルの終曲は聴きたいですからね。この曲はやはりカラヤン向きで、わざとらしくても凄い演奏は凄い、ということですね。
カラヤン=ウィーンフィル (組曲) ウィーンフィルの美しさを十二分に活かした名盤指揮 ヘルベルト・フォン・カラヤン 演奏 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
カラヤンはウィーンフィルとの演奏もあります。こちらは少し古いですが、カラヤン特有のレガートが目立ちにくいこともあり、結構人気のある演奏です。基本的にベルリンフィルとの演奏スタイルに比べて大きな差があるわけではなく、オケの違いによって結果的に大きな出ている、という感じですね。
ロジェストヴェンスキー=読売日本交響楽団 (組曲) ロジェストヴェンスキーの辿り着いたコクのある凄いスケールの演奏!指揮 ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー 演奏 読売日本交響楽団
ところで、この最後の演奏は、ロジェストヴェンスキーの円熟を示すように物凄く遅いテンポで、じっくり味合わせてくれます。 ボリショイ劇場との踊れる『白鳥の湖』とは全く別物 で、晩年のスヴェトラーノフのようです。
全曲版CDレビュー
サヴァリッシュ=フィラデルフィア管弦楽団 凛とした瑞々しさ。フィラデルフィア管の色彩感とダイナミックさ指揮 ウォルフガング・サヴァリッシュ 演奏 フィラデルフィア管弦楽団
サヴァリッシュとフィラデルフィア管弦楽団の録音です。1993年の新しめの録音で音質も透明感があって良いです。
サヴァリッシュはNHK交響楽団の指揮者として親しまれていますが、ヨーロッパでは劇場でオペラやバレエの指揮で活躍し、オペラ座での活動が中心でした。 インテンポでバレエ音楽らしいリズムを大事にしつつ 、中庸なテンポを取っています。盛り上がる所では速いテンポになり、スリリングでダイナミックな演奏になります。フィラデルフィア管弦楽団はアメリカの昔からの名門で色彩感のあるオケですが、ここでは透明感のある響きで、 ソロがとても上手く、アンサンブルのクオリティも高い です。
サヴァリッシュの円熟もあって、端正な表現で瑞々(みずみず)しく自然な表現で、レガートはそれほど掛けていません。とても奥ゆかしく、じっくり聴くと多彩なボキャブラリーの表現を聴きとれると思います。『白鳥の湖』らしい、 凛とした表現も透き通った響きで格調の高さ も感じます。
端正で奥ゆかしさがあり、オペラ座の指揮者らしいスケールの大きさも併せ持っています。バレエ音楽としての『白鳥の湖』を質の高い表現で楽しめる名盤です。
ゲルギエフ=マリインスキー劇場管弦楽団 (全曲盤) ロシアの土の香りに満ちたダイナミックな名盤指揮 ワレリー・ゲルギエフ 演奏 マリインスキー劇場管弦楽団
ゲルギエフと手兵マリインスキー劇場管弦楽団の録音です。マリインスキー劇場管はバレエとして頻繁に上演する演目ですし、劇場オケらしい臨場感のある手慣れた演奏です。2006年と新しい録音で、音質も良いです。劇場で上演される際のバージョンを用いています。
ゲルギエフは『白鳥の湖』では、それ程速いテンポはとっておらず、 スケールが大きくじっくり味わい深く聴かせてくれます 。ロシアのコンビなので、ロシアの土の香りがする響きが味わい深いです。序奏や第1幕のワルツなど、ダイナミックでスケールが大きいです。 とてもリズミカルで、基本インテンポの自然なテンポ取り です。スペインの踊り、マズルカなど生き生きとしたリズム感です。弦はロシア的なコクのある味わい深い響きです。終曲は とてもドラマティックでダイナミックかつスリリング に盛り上がります。
音質も良いですし、ロシア的な全曲盤の定番として、入門者から玄人まで幅広くお薦めできる名盤です。
プレトニョフ=ロシア・ナショナル管弦楽団 (全曲盤)指揮 ミハエル・プレトニョフ ロシア・ナショナル管弦楽団
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