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この記事では「社会的分業」とはなにか、「道徳的連帯」とはなにか、「有機的連帯」とはなにか、「機械的連帯」とはなにか、「アノミー」とはなにか、その意味や解説を行っています。クイズつきの解説動画もあります。

「業(ぎょう)」には様々な意味がありますが、「やるべきこと、しごと、事業」か「暮らして行くための仕事。なりわい。職業」のどちらでしょうか。いずれにせよ「仕事」が分けられているということでよさそうです。分業は人々に責任感や連帯感を生み出すそうです。たしかに液晶パネルを作るという社会的分業を担っている人がもしサボっていたらどうなるでしょうか。スマートフォンが出来上がらなくなります。肉屋さんがいなければ、ステーキ屋さんもこまります。こうした意味で、たしかに責任感がありそうです。また、お互いが依存しているので、連帯感も生み出しそうです。

ギデンズによれば分業を「労働は、人々がそれぞれ専門に従事する膨大な数の職業に分化してきた *5 」とあるので,職業に近いのかもしれません。

コラム:労働と職業 道徳的連帯とは

道徳的連帯(どうとくてきれんたい):責任感や規範によって結びついた連帯を道徳的連帯という。デュルケムは道徳的連帯のあり方から社会の形態を「機械的連帯」と「有機的連帯」に分類した *2 。

デュルケムの社会学の目的は「道徳の科学」にあります。一般に「道」は人が従うべきルールのことであり、「徳」はそのルールを守ることができる状態です。あるいは社会で承認されている倫理的価値です。たとえば生命を大切にするといったものは多くの社会で道徳的な行為だとされています。法律とは違って外面的な矯正ではなく、内面的で自発性を伴うものです。

デュルケムの関心は「社会を統合する道徳力としての社会」に向けられているそうです *3 。前回の記事で「犯罪があることは正常である」ということについて扱いました。犯罪があるということは、社会で規範が存在している状態であるといえるので、正常だという話です。たとえば暴力は犯罪だとみなされるのは、暴力が責められる行為であり、非道徳的な行為だと社会で共通認識があるからです。

機械的連帯と環節社会

機械的連帯(きかいてきれんたい):個人が社会に従属する連帯を機械的連帯という *7 。ただ似ているという理由で集まった均質な人々によって構成された、単純な結びつきしか持たない連帯 *6 。機械的連帯が優位になっている社会を「環節的社会」という。

こうした機械的な連帯の優位する社会を「環節的社会(かんせつてきしゃかい)」というそうです。「環節」とは一般的に「環形動物や節足動物の体節」を意味するらしいです。たとえるなら「ミミズ」ですね。ミミズはおなじ機能を持つ体節の集まりらしいです。「体節(たいせつ)」とは動物の体の頭から尻尾にかけてみられる繰り返し構造のことらしいです。体節の数だけ腎臓があるらしいです。そういう動物を環形動物といいます。他にもヒルも環形動物です。

有機的連帯と有機的社会

有機的連帯(ゆうきてきれんたい):個人は個性化し、互いに異なる機能をはたし、相互に依存する傾向を強めるような連帯を有機的連帯という *8 。有機的連帯が優位になっている社会を「有機的社会」という。

環節社会では同じような機能のあつまり、つまり非個性が重視されていました。近現代社会になると分業が複雑化し、人々がそれぞれ専門に従事する膨大な数の職業に分化してきます。他の人と同じような機能の仕事が少なくなってくるのです。伝統的な社会では主要な職人は二~三〇種類しか存在しませんでした *9 が、現在では何万、何十万と種類があります。就職の面接では「人との違い(個性)」をアピールすることが多いのではないでしょうか。

私たちは食べるもの、着るもの、移動する手段、住居、ありとあらゆる消費物を自分で生産していないことが多いです。他の職業の人々に依存しています。また、他の職業の人々も何らかの形であなたの職業に依存している場合があります。このような依存を相互依存といい、別の用語では「経済的相互依存性」といいます。

「全体としてうまくまとまっている」とはデュルケムの文脈に即して言えば、「道徳的」であるということですね。分業を通して人々が責任感や連帯感をもつことできるとデュルケムは考えていました。社会的分業が発達すればするほど、社会は道徳的な性質を帯びるということです。

コラム:産業革命

近代になる前、特に「工業化」する以前はほとんどの労働は家庭で行われ、世帯員全員が一緒になって仕事を仕上げていたそうです *10 。現代のように工場がいくつにも分かれていて、家庭とは分離しているイメージではないんですね。ひとことで言えば「家内工業(かないこうぎょう)」です。「家族従業者を主体に,自己の住宅を作業場所として営む工業の形態。低賃金と劣悪な労働条件を一般的特徴としている。歴史的には,マニュファクチュアに先立つ初期資本制経営形態の一つで,商品生産の発展とともに中世封建社会において広まった。産業革命以後,マニュファクチュアないしは工業制生産の発展とともにその多くは消滅した(略)出典」らしいです。

さらに「問屋制家内工業」から「工場制手工業」に移ります。資本家が労働者をひとつの場所に集めてい分業による協業を行うそうです。更に今度は手ではなく機械によって物を作る形に変わります。そういった形態を「工場制機械工業」といいます。このように「家内制手工業」から「工場制機械工業」へと移り変わっていったのが「産業革命」というわけです。産業革命は「工業化、工業革命」などとも言われます。1760年代から1830年代頃にイギリスで最初に起こったそうです。

デュルケムが考える好ましい連帯のあり方と「個人」

「デュルケムにとって社会の進化とは、社会の内部に多様性が生み出され、個人のあいだに多様な差異が生ずることである。そのとき、社会を維持するためには多様性を統合する作用、すなわち分業が必要であるというのである。」

「社会内部の相互作用の密度が増大するにつれて分業は増大し、機械的連帯は有機的連帯へ移行していく。デュルケムは有機的連帯の概念によって、共同体の解体が進行する産業社会での望ましい社会のあり方を示唆したと言えよう。個人の自由が増大するほど諸個人は有機的連帯を強め、それにともなって社会の道徳的密度も増大すると考えたのである。」

「クロニクル社会学」、那須壽編、有斐閣アルマ、P26-27

ポイントは、デュルケムは有機的連帯を好ましいのと考えていたことです。復習すると有機的連帯とは「個人は個性化し、互いに異なる機能をはたし、相互に依存する傾向を強めるような連帯」です。個性化するということは、同時に個人の自由が増大するということでもあります。個人の自由が増大すると有機的連帯も強くなり、 社会の道徳的密度も増大 するとデュルケムは考えたのです。

デュルケムは社会学を「道徳の科学」として考えていました。デュルケムにとって 社会とは人々の相互作用を統合する道徳的な力 なのです。個人化や多様性が発展すると、そうしたものを統合する力が必要となります。その力が「社会」なのです。そしてその社会的事実のひとつが「分業」というわけです。分業を多様性を統合する作用としてデュルケムは考えました。

アノミーとはなにか アノミーの意味

アノミー(あのみー,anomie):「法の不在」を意味するギリシャ語anomosに由来する概念。中世以来使われていなかったが、デュルケムが社会学の概念として採用し、「行為を規制する共通の価値や道徳的規準を失った混沌状態」と定義した(出典)。※哲学者としてはフランスのギュィヨーというひとが用いらたしいです。

アノミーは大不況や、経済の急激な成長によって起こることがあります。社会の道徳力が機能しなくなり、人間の欲求が際限なく肥大化していくような状態をアノミーというのです。アノミー状態では不満、絶望、焦りなどが人々を苦しめます。アノミーが原因で起こる犯罪を「アノミー的犯罪」、アノミーが原因で起こる犯罪を「アノミー的自殺」といいます。 大不況になると、今まで叶っていた欲望がかなわなくなり、アノミーになります。反対に経済が急激に成長すると、今まで以上に欲望が際限なく増えて、それが叶えられなくなり、アノミーになります。

たとえば「詐欺はよくないことだ」という共通の価値観が日本にはあります。そして詐欺行為は法律では犯罪行為であり、罰せられる行為です。もし法がなくなったらどうなるでしょうか。窃盗や暴行、誹謗中傷等々が横行するかもしれません。

ギデンズが説明しているように、やはり「規範を失った感覚」がアノミーなんですね。また、アノミー状態では「社会的な連帯も弱まる(崩壊する)」というのもポイントではないでしょうか。急激な経済成長や大不況以外にも、「分業」しすぎて道徳的連帯を逆に弱めるといったこともあるということです。夏休みに学生が自殺しやすい理由も、学校や友達等の社会と離れ、孤立する時期なのかもしれません。親離れ、子離れ、リストラ、恋人との別れといったような社会から人間が離れる方向にある現象が起きる時、アノミー的な状況が個人的に生じているのだと思います。

これによればアノミー状態は「相互依存よりも不統合が、有機的連帯よりも弱肉強食」が支配的になっているそうです。有機的連帯は分業の発展によって相互依存が高まり、人々との結びつき(統合)が強化されていくはずでしたが、逆に人とのつながりが弱まっていくこともあるようです。

経済とアノミー的分業の関連について コラム:マルクスと疎外化 アノミーに対する解決策としての「個人主義」 出典
  1. 「本当にわかる社会学」、現代位相研究所、P24-25
  2. 「本当にわかる社会学」、現代位相研究所、P24-25
  3. 「クロニクル社会学」、那須壽編、有斐閣アルマ、P26
  4. 「社会学」、アンソンー・ギデンズ、而立書房、P733
  5. 「社会学」、アンソンー・ギデンズ、而立書房、P735
  6. 「本当にわかる社会学」、現代位相研究所、P24-25
  7. 「クロニクル社会学」、那須壽編、有斐閣アルマ、P26
  8. 「クロニクル社会学」、那須壽編、有斐閣アルマ、P26
  9. 「社会学」、アンソンー・ギデンズ、而立書房、P735
  10. 「社会学」、アンソンー・ギデンズ、而立書房、P735
  11. 「本当にわかる社会学」、現代位相研究所、P24-25
参考文献・おすすめ文献 「本当にわかる社会学」

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      目次
      • 1 エミール・デュルケームとは
        • 1.1 今回の抑えておきたいキーワード
        • 1.2 動画での解説・説明
        • 1.3 プロフィール
        • 1.4 デュルケム関連の記事
        • 2.1 社会的分業とは
          • 2.1.1 コラム:労働と職業
          • 2.2.1 機械的連帯と環節社会
          • 2.2.2 有機的連帯と有機的社会
          • 2.2.3 コラム:産業革命
          • 3.1 アノミーの意味
          • 3.2 経済とアノミー的分業の関連について
            • 3.2.1 コラム:マルクスと疎外化
            • 4.1 「本当にわかる社会学」
            • 4.2 アンソニー・ギデンズ「社会学」
            • 4.3 社会学
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