フィレンツェで見られる「最後の晩餐」シリーズ。イエスやユダの見分け方は?
フィレンツェで見られる「最後の晩餐」シリーズ。イエスやユダの見分け方は?

フィレンツェで見られる「最後の晩餐」シリーズ。イエスやユダの見分け方は?

「最後の晩餐」と言えばミラノのレオナルド・ダ・ヴィンチの作品が有名ですが、実はフィレンツェにもたくさん同名の作品があります。新約聖書に登場するこのお話は昔から人気のテーマで、たくさんの芸術家が描いてきました。イエスやユダはどうやって見分ければいいのか、鑑賞ポイントとフィレンツェの個性豊かな「最後の晩餐」をご紹介します。

イエスは…(中略)…断言された。「はっきり言っておく。あなたがたのうちの一人がわたしを裏切ろうとしている。」

弟子たちは、だれについて言っておられるのか察しかねて、顔を見合せた。

イエスのすぐ隣には、弟子たちの一人で、 イエスの愛しておられた者 が食事の席についていた。シモン・ペトロはこの弟子に、だれについて言っておられるのかと尋ねるように合図した。

その弟子が、 イエスの胸もとに寄りかかった まま 、「主よ、それはだれのことですか」と言うと、イエスは、「 わたしがパン切れを浸して与える のがその人だ」と答えられた。それから、パン切れを浸して取り、イスカリオテのシモンの子ユダにお与えになった。

ユダがパン切れを受け取ると、サタンが彼の中に入った。そこでイエスは、「しようとしていることを、今すぐ、しなさい」と彼に言われた。

座についていた者はだれも、なぜユダにこう言われたのか分からなかった。

ある者は、 ユダが金入れを預かっていた ので、「祭りに必要なものを買いなさい」とか、貧しい人に何か施すようにと、イエスが言われたのだと思っていた。

ユダはパン切れを受け取ると、すぐ出て行った。夜であった。

日本聖書協会「新約聖書」ヨハネによる福音書13:21-30

イエスの愛しておられた者」とは書き手であるヨハネ自身のこと(自分で言っちゃった!! 🙄 )

この時のイエスの答えは内緒話だったんでしょうか、 その場にいた人は、なぜユダがパン切れを渡されたのか、わからなかった とあります。

フィレンツェの街を彩る「最後の晩餐」はこんなにある!

最後の晩餐はそのテーマ上、特に壁画の場合は 修道院の食堂 に描かれることがほとんどでした。

タッデオ・ガッディ(1334年頃)

タッデオ・ガッディ(Taddeo Gaddi / 1290-1366)はジョットの弟子のひとりで、14世紀前半にフィレンツェで活躍した画家です。師匠のジョットと画風がとても似ているので、この作品も古くはジョット作とされてきました。

この作品は フィレンツェで一番古い「最後の晩餐」 。サンタ・クローチェ教会付属の美術館で見ることができます。

『最後の晩餐と生命の木』タッデオ・ガッディ, 1345-50頃, フレスコ, サンタ・クローチェ教会( フィレンツェ)

長テーブルの中心にイエスが座り、その胸もとに寄りかかるように眠っている左隣の人物がヨハネ、テーブルのこちら側にひとり座っているのがユダ

レオナルドの作品(1494-1498年頃)以前はこのように ユダは孤立した形 で描かれており、一目見て誰が裏切者かすぐにわかる構図になっていました。

オルカーニャ(1360-65年頃)

この作者、オルカーニャ(Orcagna, 本名Andrea di Cione di Arcangelo / 1310-1368頃)も14世紀半ばに活躍した画家です。

サント・スピリト教会の元食堂だった壁にあるのですが、残念ながら保存状態が悪くほとんどわかりません。というわけで、たぶん・・・「最後の晩餐」?

アンドレア・デル・カスターニョ(1445-50年頃) 『最後の晩餐』アンドレア・デル・カスターニョ, 1445-1450頃, フレスコ, サンタポッローニア修道院(フィレンツェ)

こちらの作品はサンタアポッロニア修道院の食堂にあります。

1400年代初頭のブルネレスキ(建築)・ドナテッロ(彫刻)・マザッチョ(絵画)に端を発する ルネサンスの時代において、最も初めに描かれた のがこのアンドレア・デル・カスターニョの「最後の晩餐」です。

それまでの作品と大きく違うのは、 正確な遠近法を意識して描かれている こと。

13人の登場人物は、三方を囲まれたひとつの小さな部屋に集まって食事をしているシーンを、鑑賞者が まるで劇場を見ているかのように表現 されています。

また、壁や天井などの豊かな装飾も、 実際の宮殿を描きとったかのよう にとてもリアルな表現

さらに、 人物の表情がバリエーション豊富 で、これ以前の作品では聖人たちはそれほど個々人の違いが見て取れないのに対し、この作品では隣の人と話し込む人がいたり、一人で天を仰ぎみて考え込む人がいたり、驚いてイエスに注目する人がいたり。

神や聖人が絶対的な強さ、確実さをもって描かれた中世の美術から進んで、 より人間らしい表現がされるようになってきたルネサンスの特徴 がよく表れていますね。

ドメニコ・ギルランダイオ(1480年頃)

こちらはオンニッサンティ教会にある、ギルランダイオ作の「最後の晩餐」。

ガイド学校の先生カテリーナ

ギルランダイオはあのミケランジェロの師匠よ~

この作者の特徴は、 北方フランドル地方(主にベルギー)の絵画流派の影響を非常に強く受けていて 、とにかく細部の描写をとても精密に表現すること。

先ほどのアンドレア・デル・カスターニョの作品よりもさらに一歩進んで、 現実の建物の一部さえも絵画の一部に見える よう視覚効果を取り入れています。

あたかも 現実世界の空間の向こうにさらに部屋が続いている かのような表現で、登場人物のいる空間が描かれています。

また、絵の中の左手に窓が開いていて、そこから指した光により、人物の右手に影ができるよう表現されていますが、 現実にも窓は左側にあって、光の方向は絵の中の世界と一致 しています。

ドメニコ・ギルランダイオ(1486年頃) 『最後の晩餐』ドメニコ・ギルランダイオ, 1480, フレスコ, サン・マルコ美術館(フィレンツェ)

これは先ほどのオンニッサンティ教会のものと同じ、ギルランダイオの作品。サン・マルコ美術館の1階にあります。

ネコはここでは「裏切り」を意味します。

アンドレア・デル・サルト(1527年頃)

この作者、アンドレア・デル・サルト(Andrea del Sarto / 1486-1530)は、ヴァザーリ先生から「 間違いを犯さない芸術家 」と評されるほど、画力に定評のある画家。16世紀前半に活躍し、その弟子には師匠とはうって変ってアバンギャルドな画風で知られるポントルモロッソ・フィオレンティーノがいます。

この作品が見られるのは、市内中心部から少し外れた、サン・サルヴィ修道院の食堂。実はここには、レオナルド・ダ・ヴィンチと師匠ヴェロッキオの共作、「キリストの洗礼」がありました。

ミラノのレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」よりも に描かれたもので、レオナルドが改革したように ユダも孤立せず一列に 描かれています。

全体にこの作品に躍動感を感じるのは、時代の流行でもあります。

他の作品と比べて、これだけがミケランジェロレオナルドが登場したあとのもの。明暗のはっきりしたニュアンスのある色使いはミケランジェロに始まる「マニエリスム」の特徴のひとつです。

「最後の晩餐」鑑賞の楽しみ方

やはりどれがどの人物を表しているのかがわかると一層面白いですよね。

①イエス ②ユダ ③ヨハネ ④ピエトロ(=ペテロ)

①イエス

基本的に絵の中心に描かれます。

服の色は赤青いマント のことが多いです。

②ユダ
  1. ひとりだけテーブルの反対側に座っている
  2. イエスにパンを渡されている
  3. 手に小銭入れ、またはそれらしき小さな袋を握りしめていたり、腰のあたりにつけていたりする

その他にも、 ちょっと暗めの(影のある)顔立ちで描かれる ことも多いですね。また、他の人物が全員、頭上に光輪がついているのに一人だけなかったりすることも。

③ヨハネ

最初にもご紹介した通り、その福音書では「イエスの愛しておられた者」という表現が使われ、またイエスの胸によりかかっていた、という表現があることから、

  1. イエスのすぐ隣にいる
  2. テーブルに伏せたりイエスに寄りかかったりして眠っている

また、比較的若い青年の姿で描かれることが多いです。

④ピエトロ(ペテロ)

ピエトロはイエスの一番弟子で、「天国の鍵」を預けられたとされる人物。イエスの死後、教会を作った人物で、それがカトリックの総本山、バチカン市国にある聖ピエトロ寺院。ピエトロ本人はそこに葬られたとされています。

ヨハネとは逆に、年老いた姿で描かれることが多く、一番弟子だっただけにイエスに「弟子の中に裏切ろうとしているものがいる」と聞かされ、 怒りに震えてナイフを握りしめる姿 で描かれることも。

ピエトロもイエスの隣またはかなり近くに描かれ、 服の色は青黄色のマント という組み合わせが一般的。

『エマオの晩餐』ポントルモ, 1525, キャンバスに油彩, ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

ガイド学校の先生カテリーナ

こちらは食卓につく人数が3人、と少なくなっているのでそれで見分けがつくことが多いわよ~

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