太陽系に秒速58kmで突入!史上3例目の恒星間天体「ATLAS彗星(3I/ATLAS)」を発見
太陽系の中にある天体は、全てが太陽系出身であるとは限りません。中には太陽系の外から中へと突入し、再び太陽系の外へと逃げ出す天体もあり、「恒星間天体(Interstellar object)」と呼ばれます。
太陽系を通過中の恒星間天体は意外と多いと考えられており、太陽から45億km以内(海王星の公転軌道より内側)にある100m程度の恒星間天体は約1万個あると予想されています。しかし、そのほとんどは太陽から遠く離れたまま通過し、地上の望遠鏡では暗すぎて見ることすらできません。稀に太陽に接近して明るくなる場合もありますが、それでもかなり暗い上に、夜空での見た目の位置も非常にゆっくりと移動しています。このため、観測データを収集して軌道を決定することが困難になります。
※4…地球に衝突した2つの流星(CNEOS 2014-01-08とCNEOS 2017-03-09)が恒星間天体だったのではないかとする主張もありますが、現時点では否定的な見方が強く、正式には認められていません。
観測史上3例目の恒星間天体「ATLAS彗星(3I)」を発見!
So uh, there's a new interstellar object discovered at Chile yesterday. Name is A11pl3Z, has a hyperbolic trajectory of eccentricity 14±4 (WTF). Currently appmag 18, 4 AU away from Earth, and coming to 2 AU perihelion this October. (tagging🔭☄️) Observing it with remote scope rn, calling astronomers..
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— astrafoxen (@astrafoxen.bsky.social) 2025年7月2日 9:39
So uh, there's a new interstellar object discovered at Chile yesterday. Name is A11pl3Z, has a hyperbolic trajectory of eccentricity 14±4 (WTF). Currently appmag 18, 4 AU away from Earth, and coming to 2 AU perihelion this October. Observing it with remote scope rn, calling astronomers..
えーっと、昨日チリで新しい恒星間天体が発見されました。名前はA11pl3Zで、軌道離心率14±4(なんだそりゃ)の双曲線軌道です。現在の視等級は18等級で、地球から4天文単位離れており、今年の10月には2天文単位の近日点に近づきます。 ただいま望遠鏡で観測中で、天文学者に連絡しています……。
この段階では、正式な名前はついておらず、システム的に付けられる機械的な名前「A11pl3Z」で呼ばれていました。発見時の地球からA11pl3Zまでの距離は約6億7000kmであり、明るさは約18等級でした。そして発見直後より、A11pl3Zは恒星間天体である可能性が非常に高いことが分かりました。このため世界中の天文学者が追加観測の試みと過去の観測データの掘り起こしを行った結果、1日足らずで100回以上の観測記録が出揃いました。
【▲ 図2: ATLAS彗星と各惑星の軌道図。ATLAS彗星はかなり直線的な軌道を持っていることが分かります。(Credit: NASA & JPL / 加筆は筆者(彩恵りり))】
そして最初の発見情報の発表から約21時間後の日本時間2025年7月3日6時31分、小惑星センターはA11pl3Zに正式名「3I/ATLAS」が付けられたことを示す電子回報を発行しました。この時点でA11pl3Zに正式な名前が付くと同時に、観測史上3例目の恒星間天体であることが確定しました。もう少し馴染みのある言い方をすれば「ATLAS彗星」です。
- A11pl3Z: 最初の発見時のシステム上の名前。
- 3I/ATLAS: 恒星間天体としての正式な名前。
- C/2025 N1: 彗星としての符号による名前。
- ATLAS彗星: 馴染みのある名前の書き方。ただし同じ名前の彗星が非常に多いため、文脈次第で「ATLAS彗星(3I)」など、区別可能な符号をつけた方が良い。
ATLAS彗星は秒速58kmで太陽系に突入した!
【▲ 図3: ATLAS彗星(3I)の軌道離心率はとびぬけて大きいため、58km/sもの超高速で太陽系に突入したことが予測されます。(Credit: 彩恵りり)】
ATLAS彗星は恒星間天体であるため、軌道離心率と呼ばれる値が1より大きい値を示しています。しかもATLAS彗星の場合はこの値が飛びぬけて大きく、約6.1515という値が示されています。これは極めて直線的な軌道を持っていることを意味します。
しかし、これは分かる人にはスゴいと分かる値である一方、そもそも何のことだか分からない人も多いでしょう。もう少し馴染みのある言い替えをすれば、この値から計算すると、ATLAS彗星は58.0km/sというとんでもない速度で太陽系に突入したことを示しています。これほどの速度を持っている天体は、恒星間天体以外にあり得ません。このように、太陽系の外側で異常な速度を持つことは、観測した天体が恒星間天体であるかどうかを決定するための重要な要素です。
【▲ 図4: ATLAS彗星(3I)を他の天体と比較したもの。太陽系の天体は無論、他の恒星間天体と比較しても、太陽系突入時の速度が極めて大きなことが分かります。(Credit: 彩恵りり)】
【▲ 図5: ATLAS彗星(3I)は2025年10月2日に火星に約3000万kmまで最接近すると予測されています。(Credit: NASA & JPL / 加筆は筆者(彩恵りり))】
そしてもしかすると、このニュースを見た人の中には「またATLAS彗星か」という感想を抱いたかもしれません。これは彗星の命名規則で生じる問題です。しかし、今後はそのような事態がもっと増えるかもしれません。先日稼働を開始したばかりの「NSFヴェラ・C・ルービン天文台」は、今まで見逃されてきた恒星間天体を大量に発見することが期待されています。もしかすると、今後は恒星間天体の発見報告は珍しくないものになるかもしれません。そして、その大半は彗星であると予想されることから、数年後には「またルービン彗星か」というボヤきをしているかもしれません。
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- Minor Planet Electronic Circular. “MPEC 2025-N12 : 3I/ATLAS = C/2025 N1 (ATLAS)”.(Minor Planet Center)
- Small-Body Database. “C/2025 N1 (ATLAS)”.(NASA/JPL)
- astrafoxen氏のBlueSkyプロフィール
- Groups.io上での投稿
- “"Pseudo-MPEC" for A11pl3Z”.
- NASA Science Editorial Team. “NASA Discovers Interstellar Comet Moving Through Solar System”.(NASA)
- Kelly Kizer Whitt. “BREAKING: New interstellar object candidate heading toward the sun”.(EarthSky)
- Stephen Luntz. “We May Have Our Third Interstellar Visitor And It’s Nothing Like The Previous Two”.(IFL Science)
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