ヤマハのエレアコの特徴・おすすめモデル [記事公開日]2026年1月3日<br />[最終更新日]2026年03月29日
ヤマハのエレアコの特徴・おすすめモデル [記事公開日]2026年1月3日<br />[最終更新日]2026年03月29日

ヤマハのエレアコの特徴・おすすめモデル [記事公開日]2026年1月3日[最終更新日]2026年03月29日

ヤマハのエレアコ主要シリーズ(APX/CPX/A/Red Label)を解説。SRTやAtmosfeelなど独自のピックアップシステムの違いから、A.R.E.加工、各モデルの設計思想まで詳しく紹介します。

ヤマハでは、フォークギターのラインナップ(Lシリーズ&FG/FSシリーズ)とは独立したエレアコのラインナップを展開しています。 ざっくりと「アコースティックギター」でくくられますが、エレアコはフォークギターと違った構造が求められます。 生楽器は本体が豊かに響くよう設計しますが、本体があまりに豊かに鳴ると、ステージで盛大にハウリングを起こしてしまうことがあるからです。 そのためエレアコでは、楽器本体の生鳴りがコントロールされる独自の設計が必要になってきます。 この記事ではヤマハのエレアコ各シリーズの設計思想・ピックアップの違いなど解説します。「次の1本」の選択肢を絞り込む手がかりとして活用してください。

ヤマハのエレアコの特徴

3つのピックアップシステム

ヤマハのエレアコに搭載されるピックアップシステムには、アコースティックなトーンを追求した「SRT(System 63)」、楽器の振動までピックアップする「ART(System 64,68)」、一般的なエレアコサウンド「System 66」の3つがあります。

システムの番号は歴代ピックアップシステムの通し番号ですから、グレードとイコールにはなりません。 この中での最新はSystem 68ですが、最もグレードが高いのはSystem 63です。 それぞれ好みでサウンドメイキングができるようになっている他、便利なクロマチックチューナーが搭載されています。 また一般に入手しやすい単三乾電池で作動します。

SRT SRTプリアンプ部分

「SRT(=Studio Response Technology)」は、レコーディングスタジオでマイク録音(=エアー録り)したアコギの音を、エレアコ(=ライン録り)で再現するシステムです。 生の音とエレアコの音では振動伝達の経路が異なるため、エレアコ本来のサウンドは生音と全く違う印象になります。 それゆえエレアコは「エレアコのサウンド」として、「生のサウンド」とは別物として扱われてきました。

項目 信号経路 生の音 弦振動 → ボディが振動 → 空気が振動 → マイク録音 → レコーダやPA エレアコの音 弦振動 → ピックアップで電気信号に変換 → プリアンプで増幅 → レコーダやPA
  • レコーディングスタジオでアコギをマイク録音した音の波形
  • ピックアップからのダイレクト音の波形

この二つを比較解析してマイク録り特有の「空気感」を突き止め、生のサウンドを再現しています。 使用するマイクを3種類から選択でき、オフマイク(=遠くに設置したマイク)の音も追加できます。 またピエゾピックアップ本来の硬質なサウンドも別で持っており、どちらかのみ出力、また二つをブレンドして出力することができます。

ヤマハはSRTについて「生の音がする」という説明に終始しており、「モデリング」「シミュレータ」というワードを公式には使っていません。 「他社のモデリング技術とは異なる」という論調で独自性を印象づけようとしているものと考えられますが、かえってイメージが掴みにくく判りにくくなっていますね。 SRTは実質的には、「ヤマハ独自開発のモデリング技術」という理解で大丈夫です。

ART APXT2 ARTシステム

通常エレアコのピエゾピックアップはサドルの真下に設置され、サドルが受けた弦の振動を拾うようになっています。 ARTはこのピエゾをブリッジ裏に設置することで、楽器の持つボディ鳴りも拾うシステムです。 ピックアップをちょうどいい位置に設置することで、弦鳴りのアタック感とボディ鳴りのバランスが取られたサウンドが得られます。

System 66

System 66は、サドル下に配置したピエゾピックアップのサウンドを、そのままプリアンプに送るシステムです。 硬質でアタックの立つ「本来のエレアコサウンド」が得られ、プリアンプはSystem 64と共通になっています。

Atmosfeelピックアップ(3Wayシステム)
  • ①アンダーサドル・ピエゾ(弦振動を直接検知)
  • ②ボディ内コンタクト(箱鳴りを検知)
  • ③ブリッジ下ピエゾ(低域の振動を補完)

コントローラーはBass EQ・Master Volume・Mic Blendの3つのみというシンプルな構成で、Mic Blendを上げると生音に近いナチュラルなサウンドに、下げるとアンプライクなタイトなサウンドに調整可能です。

A.R.E.(Acoustic Resonance Enhancement)

A.R.E.は、木材に温度・湿度・気圧変化を与えて繊維構造を変化させるヤマハ独自の技術です。 長年弾き込まれた枯れたサウンドを新品から実現します。 Aシリーズ上位モデル(A3系)、Red Labelシリーズ、Lシリーズ(LL/LJ/LS6 ARE以上)に採用されています。

ヤマハ・エレアコのラインナップ

APX – ライブ特化の薄胴モデル YAMAHA APX600

APXシリーズのエントリーモデル。はじめてのエレアコにおすすめのラインナップです。 634mmの短めのスケールにより、弦のテンションが柔らかくスムーズなフィンガリングが可能。 SRTピックアップシステムにはチューナーも搭載され、初心者からライブのサブ機を探す中級者まで広く支持されている一本です。 ボディの表板にフレイムメイプルを採用した高級感溢れる外観の「APX600FM」もラインナップされています。

APX-T2

APX-T2は、APXの全長を15%ほど短くしたミニギターです。 弦長580mmはベースのAPX(650mm)より7cm短く、ミニフォークギターJR2(540mm)より4cm長くなっており、子どもの習い事としてギターを始める際、APX-T2とJR2のうちから体格に合わせて選べるようになっています。 また電気系はARTで、操作系こそ簡略化されていますがボディ鳴りを出力でき、大人のガチの趣味に耐える性能を持っています。

CPX – 生鳴りとライン音を両立する深胴モデル

APXの薄胴設計に対し、CPXは通常のアコギに近い深胴設計です。 ハウリング対策で生鳴りの量を制御する構造を取りながら、深いボディでアコギ本来の生のトーンを持っています。 くびれが深いボディデザインは、座って弾く時の弾きやすさを考慮しています。

YAMAHA CPX600

パワフルな生鳴りとステージでの実用性を両立した「コンパスシリーズ」のエントリーモデルです。 ミディアムジャンボ・ボディによりエレアコながら豊かな響き、ダイナミックなサウンドを実現しています。 634mmの短めなスケールで弦を押さえやすい設計、 ストロークプレイでの迫力はもちろん、アルペジオでも一音一音が際立つクリアな響きが魅力です。

💡 APX vs CPX 選び方の目安 バンド・ステージ中心で「ライブでの音の切れ味」を優先するならAPX。弾き語りや小規模ライブで「生音とPA音のバランス」を重視するならCPX。グレードは共通なので、ボディ形状の好みで決めても問題ありません。

Aシリーズ – FG/FSのDNAを持つ、生鳴り重視のエレアコ

上述のAPX/CPXは高性能なエレアコとして開発されましたが、AシリーズはフォークギターのFG/FSシリーズをエレアコにアレンジしたモデルとしてデビューしました。 スタンダードかつ握りやすいFGのネックを継承し、「A」ではFGの、「AC」ではFSのボディにカッタウェイを付けています。 内部のブレーシングも共通しており音響性能的に共通点が多くありますが、マテリアルに違いが設けてあり、楽器としての個性はきちんと分けられています。 また名器「N1000」のピックガードを受け継ぐことで、特徴ある攻めたルックスになっています。

A1シリーズ:A1R/AC1R/A1M/AC1M

マホガニーネックは維持しつつ、サイド&バックを合板にすることで価格を抑えたモデルです。 合板は頑丈なのでライブでガンガン演奏するのに向いています。 電気系はARTが採用され、ボディ鳴りまでライブ会場に響き渡らせることができます。

A3シリーズ:A3R/AC3R/A3M/AC3M

このグレードは10万円近辺という価格帯ながら、ボディが「オール単板」かつエボニー指板/マホガニーネックとなっており、APX/CPXシリーズより高級な仕様になっています。 ベースとなっているFG/FSよりもギター本体のスペックが上がっており、今後このモデルをプッシュしていきたいというヤマハのモチベーションを感じさせます。 電気系はSRTで、空気感のある柔らかいサウンドをアウトプットできます。

FG/FS Red Label – 生音最優先、3Wayピックアップの実力派

2019年に登場したFG/FS Red Labelシリーズは、1966年の初代FGシリーズ(通称「赤ラベル」)の精神を現代に復活させたモデルです。 FSX3(フォークボディ)とFGX3(ドレッドノートボディ)がエレアコ仕様で、どちらもオール単板・ARE加工・Atmosfeelピックアップという最新スペックを備えています。 ARE加工により長年弾き込まれたような熟成されたサウンドを実現。 海外生産によるコスパ重視の「3シリーズ(FSX3 / FGX3)」、日本国内の職人によるハンドメイドモデル「5シリーズ(FSX5 / FGX5)」と2つのグレードに分類されます。

FSX3 / FSX5(フォークタイプ)

小ぶりでボディ厚も薄め。レスポンスが速く、1音1音が明瞭なためフィンガーピッキングや、抱えやすさを重視する方に最適です。 FSX3はライトケース付属のコストパフォーマンスモデル。 FSX5は、高級感のあるグロス塗装に加え、ナットとサドルに牛骨、ブリッジピンにエボニーを採用。厳選された素材と熟練のクラフトマンシップにより、音の粒立ちとふくよかさが際立ちます。専用ハードケース付属。

FGX3 / FGX5(ドレッドノートタイプ)

ヤマハ伝統のウェスタンシェイプ。ボディが大きく容積があるため、低音の迫力と豊かな音量があり、ストロークプレイで真価を発揮します。 FGX3はライトケース付属のコストパフォーマンスモデル。 FGX5は、グロス塗装、ナットとサドルに牛骨、ブリッジピンにエボニーを採用、専用ハードケース付属。

LXシリーズ ─ 最も歴史あるハイエンドライン サイレントギター

環境問題が重視される風潮の中、練習につきまとう「音の問題」は、特に都会に暮らすミュージシャンには大問題でした。 近隣への迷惑を気にせず「思い切り練習が出来る楽器」として、ヤマハはサイレントピアノやサイレントドラムなどの「サイレントシリーズ」を提唱しています。 サイレントギターは共鳴胴を持たず、生の音量は10〜20%ほどにまで下げられます。

サイレントギターでの練習はヘッドホンを使用します。 リバーブなど内蔵エフェクトで練習に集中しやすいサウンドを作り、外部入力端子に音楽やメトロノームを送ってミックスするなど、積極的な練習ができるようになっています。 またACアダプタ(別売)に対応しており、電池残量を気にせず何時間でも練習ができます。

ヤマハのエレアコは、ライブステージでの実用性と楽器本来の鳴りをいかに両立させるかという、長年の研究成果が詰まったラインナップとなっています。 圧倒的なハウリング耐性と取り回しの良さを誇るAPX、深い胴鳴りをラインにのせるCPX、伝統のFG/FSのDNAを継承し生音にこだわったAシリーズRed Label、究極の練習環境を提供するサイレントギター。 それぞれの個性を理解した上で、ぜひ楽器店でその「音の空気感」を体感してみてください。

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