【夏草や兵どもが夢の跡】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞文・作者など徹底解説!!
五・七・五のわずか十七音に詠み手の心情や風景を詠みこむ「俳句」。 この十七音を極め、民衆文芸だった俳諧を芸術の域にまで高めたのが、かの有名な俳人「松尾芭蕉」です。 芭蕉が残した名句は数多くありま
五・七・五の十七音に四季を織り込み、詠み手の心情や情景を詠みこむ俳句。 名句と聞くと、の作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか? 秋田便の飛行機から見る月山が好きです。 今日は残念ながら雲に隠れていましたが、松尾芭蕉の句を思い出しました。 雲の峰 いくつ崩れて 月の山 pic.twit.
季語この句に含まれている季語は 「夏草」 で、季節は 「夏」 を表します。
夏草とは特定の植物を指すわけではなく、 夏に生い茂る青草全般 を意味します。
意味こちらの句を 現代語訳 すると・・・
「今や夏草が生い茂るばかりだが、ここはかつては武士達が栄誉を求めて奮戦した跡地である。昔のことはひと時の夢となってしまったなあ」
また、「夢の跡」は、全てが過ぎ去ってしまい、 今はもう何もない様子。 人生の儚さが秘められている言葉になります。
この句が詠まれた背景芭蕉が 46 歳の頃の作で、 岩手県平泉町で1689年5月13日(新暦6月29日) に詠まれました。
それから約500年の月日が経ち、芭蕉がこの高館にのぼりあたりを見渡すと、かつての藤原家の栄華の痕跡はあとかたもありませんでした。
ただ夏草が青々と生い茂る風景を目の当たりにして、 「全ては短い夢のようだ」と人の世の儚さを詠んでいます。
また、芭蕉は中国古来の詩人・杜甫(とほ)を尊敬しており、人間的にも芸術的にも大きな影響を受けていました。この句の 前書き にも、杜甫の「春望」の一節を記されています。
「国破れて山河あり、城春にして草青みたりと、笠打敷て、時のうつるまで泪を落し侍りぬ。」
このことから 杜甫の詩を意識して詠まれた句 だと分かりますが、芭蕉は「城春にして草青みたり」の春の草を「夏の草」に転じています。
「夏草や兵どもが夢の跡」の表現技法
「夏草や」の切れ字「や」による初句切れ切れ字とは「かな」「けり」「や」などの語で、句の切れ目に用いられ 作者の感動の中心 を表します。
この句でも最初の五音、つまり初句で切れているので 「初句切れ」 となります。
「夢の跡」の体言止め文を断ち切ることで言葉が強調され、その後に続く 余情・余韻 を残すことができます。
この句でも「夢の跡」と体言止めが使われており、 読み手にその後に続くイメージを膨らませる効果 をもっています。
「夏草」と「兵ども」の対比それぞれの特性を強調し、 インパクトを強める効果 があります。
この句では「夏草」と「兵どもが夢の跡」を対比的に用いられています。つまり、 自然の雄大さと人の世の儚さを並べることで、無常観を表現している のです。
「夏草や兵どもが夢の跡」の鑑賞文
前書きの「春望」の一節を踏まえると、 よりいっそう夢幻感をかきたてられます。
芭蕉は、たとえ夢のように儚い世でも、 精一杯生きようとする人々の美しさ を描いています。
この句からは栄華を極め、無残にも果てた者たちを偲び、供養や鎮魂とも取れる心情が感じ取れます。
「夏草や兵どもが夢の跡」の補足情報
平泉の古戦場跡と金色堂平泉の項目には「叢(くさむら)」という表現が 2 回出てきますが、「夏草や」の句と「五月雨の降り残してや光堂」の句の前に 1 度ずつ使われて、対比されているのが特徴です。
「偖(さて)も義臣すぐつてこの城にこもり、功名一時の叢となる。」
「七宝散りうせて、珠の扉風に破れ、金の柱霜雪に朽ちて、既に頽廃空虚の叢となるべきを…」
既に夏草が生い茂る平原となった古戦場と、まだ当時の栄華の痕跡を残している金色堂の両方で「叢」を使い、 より無常観を強めている対比 です。
『猿蓑』に収録された2つの追悼句「夏草や」の俳句は『おくのほそ道』に収録されていますが、その前に弟子の向井去来と野沢凡兆が編纂した 『猿蓑』 で発表されています。
そこでは、「夏草や」の句の前に、かつて芭蕉が若い頃に士官していた 藤堂良忠 、俳号としては蝉吟の句が並べて収録されています。
「大坂や 見ぬよの夏の 五十年」
(訳 : かつて戦のあった大阪だなぁ。身も知らぬ祖父が戦死した大坂夏の陣からもう 50 年も経ったことだ。)
この句は、 祖父である藤堂良勝が大坂夏の陣で戦死して五十年忌を迎えたことを受けて詠まれた句 です。
蝉吟は 1642 年に生まれていますので、 1615 年に戦死した祖父の顔は知らず、そのために 「見ぬよの夏」 と詠んでいます。
蝉吟は 1666 年に 25 歳の若さで亡くなっています。一方で、「夏草や」の句が詠まれたのは 1689 年、『猿蓑』が刊行されたのは 1691 年、『おくのほそ道』の刊行はさらに後の 1702 年です。
芭蕉にとっては蝉吟と過ごした時間も、 蝉吟の詠んだ「五十年」に近い感覚だったのかもしれません。
50年も 600 年も同じように、遠い世で戦死した兵たちを追悼すると同時に、早逝してしまったかつての主であり 友人への追悼の心 も感じられます。
作者「松尾芭蕉」の生涯を簡単にご紹介!
松尾芭蕉( 1644 ~ 1694 年)は伊賀国(現在の三重県)に生まれました。
農民の生まれだとされていますが、幼少期のことは明らかになっていません。 10 代後半の頃から京都の北村季吟に弟子入りし、俳諧の世界に足を踏み入れます。
俳人として一生を過ごすことを決意した芭蕉は、 28 歳になる頃には北村季吟より卒業を意味する俳諧作法書「俳諧埋木」を伝授されます。若手俳人として頭角をあらわした芭蕉は、江戸へと下りさらに修行を積みました。
芭蕉といえば「旅」のイメージが強いかもしれませんが、実は日本各地を訪れるようになったのは 40 歳を過ぎてからでした。
45歳の頃、弟子の河合會良とともに、「奥の細道」の旅に出ます。約 150 日間をかけて東北・北陸を巡り、全行程で約 2400km もの距離を歩いたと言われています。
大阪へ向かう最中に体調を崩した芭蕉は、そのまま 51 歳の生涯を閉じました。亡くなる 4 日前には、病の床で「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」という辞世の句を残しています。
松尾芭蕉のそのほかの俳句
【蛤のふたみにわかれ行く秋ぞ】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞文・作者など徹底解説!! 【江戸時代の有名俳句20選】魅力的な名句はコレ!!歴史を感じるオススメ俳句を紹介 【夏の俳句 おすすめ30選】小学生向け!!夏の季語を使った俳句例(一覧)を紹介! 【鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし】俳句の季語や意味・背景・表現技法・鑑賞など徹底解説!! 【卯の花をかざしに関の晴着かな】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞・作者など徹底解説!! 【若葉して御目の雫ぬぐはばや】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞・作者など徹底解説!! 【木枯らし(凩)の有名俳句 30選】冬の季語!!冬の寒さを感じるおすすめ有名俳句を紹介 【目出度さもちう位也おらが春】俳句の季語・意味・鑑賞文・作者「小林一茶」など徹底解説!! 【菜の花の中へ大きな入日かな】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞・作者など徹底解説!! 【お盆(墓参り)の俳句ネタ集 20選】小学生&中学生向け!!季語を含むおすすめ俳句を紹介! 【秋深き隣は何をする人ぞ】俳句の季語や意味・場所(何県)・表現技法・作者など徹底解説!! 【子供をテーマにした有名俳句 30選】名句はこれ!!季語(春夏秋冬)を含む俳句を紹介!- 【まさをなる空よりしだれざくらかな】俳句の季語や意味・表現技法・鑑賞文・作者など徹底解説!!
- 【咳の子のなぞなぞあそびきりもなや】俳句の季語や意味・背景・鑑賞文・作者など徹底解説!!
- 1 「夏草や兵どもが夢の跡」の俳句の季語や意味・詠まれた背景
- 1.1 季語
- 1.2 意味
- 1.3 この句が詠まれた背景
- 2.1 「夏草や」の切れ字「や」による初句切れ
- 2.2 「夢の跡」の体言止め
- 2.3 「夏草」と「兵ども」の対比
- 4.1 平泉の古戦場跡と金色堂
- 4.2 『猿蓑』に収録された2つの追悼句
俳句の教科書 All Rights Reserved.