金子みすゞ 「どんぐり」「梨の芯」(『金子みすゞ全集』より)
金子みすゞ 「どんぐり」「梨の芯」(『金子みすゞ全集』より)

金子みすゞ 「どんぐり」「梨の芯」(『金子みすゞ全集』より)

どんぐりどんぐり山でどんぐりひろて、お帽子にいれて、前かけにいれて、お山を降りりゃ、お帽子が邪魔よ、辷すべればこわい、どんぐり捨ててお帽子をかぶる。お山を出たら野は花ざかり、お花を摘つめば、前かけ邪魔よとうとうどんぐりみんな捨てる。梨の芯梨

時無草 秋のひかりにみどりぐむ ときなし草は摘みもたまふな やさしく日南にのびてゆくみどり そのゆめもつめたく ひかりは水のほとりにしづみたり ともよ ひそかにみどりぐむ ときなし草はあはれ深ければ そのしろき指もふれたまふ.

中原中也 「蜻蛉に寄す」(詩集『在りし日の歌』より)

蜻蛉に寄す あんまり晴れてる 秋の空 赤い蜻蛉(とんぼ)が 飛んでゐる 淡(あは)い夕陽を 浴びながら 僕は野原に 立つてゐる 遠くに工場の 煙突が 夕陽にかすんで みえてゐる 大きな溜息 一つついて 僕は蹲(しやが)ん.

中原中也 「一つのメルヘン」(詩集『在りし日の歌』より)

一つのメルヘン 秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、 小石ばかりの、河原があつて、 それに陽は、さらさらと さらさらと射してゐるのでありました。 陽といつても、まるで硅石(けいせき)か何かのやうで、 非常な個体の粉末のやうで.

金子みすゞ 「もくせい」「もくせいの灯」「曼珠沙華」「花のお使い」「紋附き」(『金子みすゞ全集』より)

もくせい もくせいのにおいが 庭いっぱい。 表の風が、 御門のとこで、 はいろか、やめよか、 相談してた。 もくせいの灯 お部屋にあかい灯ひがつくと、 硝子のそとの、もくせいの、 しげみのなかにも灯がつくの、 .