距腿関節の運動軸と他動運動
距腿関節の運動軸と他動運動

距腿関節の運動軸と他動運動

距腿関節の運動軸と,それを考慮した他動運動についてまとめています。さらに,定説以外の異なる説も紹介します。前半はどちらかというと学生向けです。後半はどちらかというとより深く勉強したい方向けです。

運動軸の傾きだけでなく,位置も調べています。内外果を基準にした運動軸の正確な位置の平均値は,外側は外果先端の 3 mm 下方,8 mm 前方で,内側は内果先端の 5 mm 下方,1 mm 後方です。内果の方が外果より前にあるのですが,運動軸は外果に対しては前,内果に対しては後ろにあります。また,内果の方が外果より上にあるのですが,内外果に対して,運動軸は内果側の方がより下にあります。ということは,運動軸は内外果を結んだ線ほどは斜めになっていないかもしれないということです。

研究方法の詳細

標本は以下のようになっています。標本数は 46 体です。靭帯や関節包に損傷のない標本を用いています。多くは高齢の献体です。標本の関節軟骨に関節炎による著明な変化はありません。下腿の下 1 / 3 で切断しています。測定時には靭帯や関節包などの軟部組織は全て取り去っています。

運動軸の位置は正しいのか 角度の詳細

前額面での運動軸の角度は,脛骨の長軸に対する角度を測定していますが,標本の脛骨は下 1 / 3 しかありません。脛骨は湾曲していますので,下 1 / 3 のみの長軸と全体の長軸は異なるはずです。基準線が異なれば角度測定の結果も変わってきます。臨床で運動軸を考えるときは,下腿の長軸を基準に考えるのが自然だと思います。すると,論文にある角度の数字は臨床にはそぐわない数字なのかもしれません。

その角度は平均 80 度ですが,論文には全ての標本の角度が記載されており,最小値は 68 度,最大値は 88 度です。平均という代表値だけでなく,数字の分布がわかるということは大事なことです。最大値の 88 度だと,傾いているとは言いにくい数字です。個人差が結構あるということが分かります。

水平面での足の中央線と距腿関節の運動軸の角度は平均で 84 度ですが,最小値は 69 度,最大値は 99 度です。46 体の標本のうち,90 度以上は 12 体です。およそ 1 / 4 が足の中央線に対して直角か逆に傾いているということです。平均 84 度という数字だけだと,現実とはかけ離れた数字になります。基準線である足の中央線のばらつきが大きいのではないかと思います。第 2 趾と第 3 趾の間というのは,距腿関節よりも遠位の関節によって変わるからです。

Barnett と Napier 5) による説(底屈と背屈で軸が異なる)

Barnett と Napier は,中間位から背屈するときの運動軸は外下方に傾き,中間位から底屈するときの運動軸は内下方に傾くとしています。前額面での傾きのみを述べており,水平面や矢状面での傾きについては述べていません。

図 3: 距腿関節背屈時の運動軸,文献 5)を参考にして作図 図 4: 距腿関節底屈時の運動軸,文献 5)を参考にして作図

Siegler 6) らによる説(円錐台モデル)

CT のデータから距骨の 3D 画像を作成し,距骨の形状を測定しています。そして,前述の Barnett と Napier のように距骨滑車の側面に円をあてはめるのですが,内側面と外側面のそれぞれに一つの円をあてはめています(前方部分と後方部分に分けてはいません)。円の大きさは内側の方が大きくなります。これらのことから,距骨滑車の形状は円錐台であり,その頂点は外側を向き,側面は凹んでいるというモデルを提唱しました(円錐台とはプリンのような形です)。

図 5: 距骨滑車は円錐台であるとするモデル

おわりに

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参考文献

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2019 年 10 月 23 日2021 年 4 月 12 日2022 年 12 月 11 日2023 年 4 月 20 日

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