脳梗塞の症状について①:手・足の動かしづらさ、顔のゆがみ、言葉が出ない、ふらつきなど
脳梗塞の症状は手足の麻痺、失語(言葉が出ない、理解できない)、注意障害、認知障害など、さまざまです。ダメージを受けた脳の部位や、その程度によってあらわれる症状が異なります。このページでは、脳梗塞の多様な症状について詳しく説明します。
身体を動かす時、その指令を筋肉に出すのは大脳皮質の運動野と呼ばれる部分です。運動野と手足の筋肉は神経でつながっていて、脳の信号が神経を通じて筋肉まで伝わり、身体を動かします。このように自分の意思による運動を随意運動と言います。随意運動の命令を届ける神経の経路が錐体路(すいたいろ)です。大脳皮質から始まって脳の錐体という部分を通り、脊髄(せきずい)に伸びています。大脳皮質と脊髄をつないでいるので、錐体路を別名で「皮質脊髄路」とも言います。錐体路が障害されると、身体を思うように動かせなくなります。
身体の運動には、心臓の拍動や腸が食べ物を送り出す動きのように、自分の意思とは無関係の運動もあります。このような意思によらない運動は 不随意運動 と呼ばれます。
錐体路がダメージを受けた際の症状について■膝蓋腱反射とアキレス腱反射 膝蓋腱反射は、膝のすぐ下を打腱器(診察用のハンマー)で叩くと膝から下が跳ね上がることです。健康診断の一つとして受けたことがある人がいるかもしれません。アキレス腱反射は打腱器でアキレス腱を軽く叩くと足首が足の裏の側に伸びる反応です。
実はこの2つに限らず、身体のあちこちで、腱を叩くと関節が叩かれた側に曲がるという現象を観察できます。これを腱反射と言います。
■痙性麻痺(けいせいまひ) 痙性麻痺は、筋肉が固く緊張して動かせない状態のことです。筋肉に脳からの信号が届かなくなり、筋肉を緊張させる信号があるのに緊張をゆるめる信号がない状態になることが原因です。
■バビンスキー反射 バビンスキー反射は腱反射と同様のしくみで起こる足の裏の反射です。
麻痺によりできやすくなる褥瘡(じょくそう)とは3. 失語:言語の障害
失語はいくつかの種類に分けられます。どのような失語があらわれるかはダメージを受けた脳の場所によって決まります。
失語について:優位半球がカギを握る大脳は大きく「右半球」と「左半球」に分けられ、言葉の機能は左右のどちらか一方が主に担当します。左右のどちらが言語機能を担っているかは人によって違い、その人の言葉を担当しているほうを優位半球と言います。
右利きの人では左半球が優位半球である人が多いです。そのため右利きの人の多くは左の脳梗塞が原因で失語が起きます。一方で、左利きの人では、右利きの人よりも優位半球が右半球である割合が高いです。
より詳しいことを述べるなら、言語は優位半球の中にある言語中枢(げんごちゅうすう)と呼ばれる部分が担当しています。言語中枢の中でも特に重要とされるのが、ブローカ野(Broca野、ブローカや)とウェルニッケ野(Wernicke野、ウェルニッケや)です。
■ブローカ野(Broca野) ブローカ野は運動性言語中枢とも呼ばれます。大脳の前頭葉にあります。ブローカ野が障害されると、他人の言葉を聞いて理解することはできるけれども、自分が言葉を話すことはできないという症状があらわれます。このような症状を運動性失語と言います。
■ウェルニッケ野(Wernicke野) ウェルニッケ野は知覚性言語中枢と呼ばれます。大脳の側頭葉にあります。ウェルニッケ野が障害されると、なめらかに言葉を発することはできるけれども、他人の言葉を理解できないという症状が現れます。これを感覚性失語と言います。
4. 構音障害:しゃべりづらさ
脳梗塞を 発症 するとしゃべりづらさを自覚することがあります。
ひとつは、前述した失語です。脳の「言葉」を担当する部位の脳梗塞によって起きます。もうひとつは、言葉を発するために必要な筋肉をうまく動かせない「 構音障害 」と呼ばれる状態です。
構音障害について言葉の理解は問題なくできますが、口や舌、喉の麻痺で言葉を発しづらくなります。脳の中でも脊髄に近い延髄(えんずい)や橋(きょう)という部分の障害で起こります。症状は障害される神経によって異なります。
■顔面神経麻痺による構音障害 顔面神経は顔の筋肉(表情筋)を動かす神経です。(顔面の筋肉動作の他にも涙の分泌や味覚にも関係します)。顔面神経から伝わる信号によって次のような動きができます。
- 眉を上げ、額にしわを寄せる
- 目を強く閉じる
- 口を尖らせる
- 口角を上げる
表情筋を動かす信号は、脳の橋(きょう)という部分にある顔面神経核から伝わってきます。顔面神経核から顔面神経が耳の前あたりまで伸びてきて、そこからあちこちの表情筋に向かって枝分かれしています。
また、顔面神経麻痺の症状はたいてい左右どちらか片側にだけあらわれるという特徴があります。
■舌下神経麻痺による構音障害 舌下神経(ぜっかしんけい)は、舌を動かす神経です。延髄にある舌下神経核から伸びてきた神経細胞でできています。
延髄の脳梗塞などで舌下神経が障害されると、舌をうまく動かせなくなります。すると、「ラ」行などが発音しにくくなることがあります。舌下神経麻痺の症状もたいてい左右どちらか片側にだけあらわれます。このため、舌を突き出そうとすると片方に寄ってしまうなどの特徴が見られます。
■迷走神経麻痺による嗄声(させい) 迷走神経から枝分かれする上喉頭神経や反回神経が、声を出す機能に関わっています。これらは脳の延髄にある疑核(ぎかく)から伸びています。
5. 嚥下障害:飲み込みが悪い、むせる
誤嚥すると、誤嚥性肺炎の危険性が高まります。誤嚥性肺炎とは、肺に入ってしまった食べ物や唾液が原因で 細菌 が繁殖し、肺に 炎症 を起こした状態です。高齢者の死因の代表的な病気のひとつです。そのため誤嚥の予防はとても重要なのです。
6. ふらつき、めまい
一方、脳梗塞によるめまい・ふらつきの特徴は、耳鳴り・難聴がなく、ふわふわするようなめまい(浮動性めまい)であると言われています。
7. 視力・視野障害:ものが見えない・見えづらい、視野の一部が欠ける
視神経が障害されると、ものが見えなくなったり、見えづらくなったりします。また、目を動かす神経や筋肉が障害されると、物が二重に見える症状( 複視 )があらわれます。
視神経障害による視力障害視神経は目に写っている映像の信号を脳に送る神経です。
眼から入った光は透明な 水晶体 を通過して、眼球の奥にある 網膜 という膜に届きます。網膜に光が届くと、その映像を視神経が感知して、電気信号として脳に送ります。視神経に栄養を与える血管に脳梗塞の影響が及ぶと、視力に障害が出ます。
動眼神経・滑車神経・外転神経麻痺による眼球運動障害と複視動眼神経・滑車神経・外転神経は脳幹という部分とつながっています。脳幹部の脳梗塞ではこれらの神経が障害されることが多く、目を動かせない、物が二重に見えるといった症状があらわれます。
8. 意識障害:意識がぼんやりする、意識がなくなる
脳梗塞で意識の状態が悪くなることは多くはありません。複数の脳血管や、脳に向かう太い血管が詰まった場合には意識状態が悪くなることがありますが、頻度は高くないと考えて良いです。 意識障害 が起こると次のような症状があらわれます。
- 質問に対しておかしな答えが返ってくる
- 今日の日付や、今いる場所を答えることができない
- ぼんやりしている、眠ったような状態が続いている
- 倒れたまま目を開けない
- 呼びかけたり身体を揺すっても、全然反応がない
意識レベルの基準として、グラスゴーコーマスケール(Glasgow Coma Scale)が世界的に使われています。グラスゴーコーマスケールは略してGCSとも言います。
【グラスゴーコーマスケール(Glasgow Coma Scale:GCS)】
- 刺激で目を開けるかどうか(E)
- もともと開けている:4点
- 言葉をかけると目を開ける:3点
- 痛みを与えると目を開ける:2点
- 痛みを与えても目を開けない:1点
- 今いる場所や日時を理解したうえ返事ができる:5点
- 会話が混乱する:4点
- 不適当な言葉が出る:3点
- 言葉として理解できないことを言う:2点
- 言葉で答えない:1点
- 言われた指示に従って動く:6点
- 痛みを与えられた場所に手足を持ってくる:5点
- 痛みから逃れるように手足を動かす:4点
- 痛みの場所と関係ない方向に手足を動かす:3点
- 痛みを与えると手足を伸ばす:2点
- 痛みを与えても動かない:1点
ほかの評価方法として、日本ではジャパンコーマスケール(Japan Coma Scale:JCS)もよく使われています。JCSは意識レベルを大きく3段階に分け、それぞれをさらに3段階に分けた9段階で評価することから、「三三九度方式」とも呼ばれています。
【ジャパンコーマスケール(Japan Coma Scale:JCS)】
- Ⅰ:刺激しなくても目を開けている
- Ⅰ-1:なんとなく意識がはっきりしない
- Ⅰ-2:今いる場所や日時がわからない
- Ⅰ-3:自分の名前や生年月日が言えない
- Ⅱ-10:普通に話しかけると目を開ける
- Ⅱ-20:大きな声をかけたり体を揺さぶると目を開ける
- Ⅱ-30:痛みを与えながら呼びかけると目を開ける
- Ⅲ-100:痛みを与えると払いのけるような動作をする
- Ⅲ-200:痛みを与えると顔をしかめたり手足を少し動かしたりする
- Ⅲ-300:痛みに反応しない
9. 症候性てんかん:手足がけいれんする
脳梗塞でてんかんが起きることがあります。てんかん 発作 が起こると、手足や全身がけいれんしたり、意識状態が悪くなったりします。脳梗塞の発症後、数時間以内に起きることもあれば、数週間後、数カ月後以降に初めててんかん発作が起こることもあります。
10. 高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)
11. 脳血管性認知症:脳卒中が関連して物忘れが進む
12. 脳血管性パーキンソニズム:脳卒中が関連して手足の震えが出たり、動かしづらくなる
13. 脳梗塞後のうつ
14. 脳梗塞の前兆(前触れ)症状:一過性脳虚血発作(TIA)について
- 手や腕の麻痺で見られる症状
- 片方の手や腕に力が入りにくい
- 箸がうまく使えない
- 文字がうまく書けない
- 手に持ったものを落とす
- 片足に力が入らなくて、立てない
- 片足を引きずる
- 片足を上手く持ち上げることができず、段差によく引っかかる
- 身体がふらつく
- まっすぐ歩いているつもりなのに、片側へ寄ってしまう
- 顔の半分が歪んで、左右差があらわれる
- ろれつが回らない
- 「イー」と口を左右に広げたとき、片方の口が動かない
- 言葉が理解できない
- 言葉は理解できるが、喋ろうとすると言葉が出てこない
- 突然片目が真っ暗になって見えなくなる
- 突然片目の視野の一部が欠ける
- 片方の手足に触られている感覚がなくなったり、しびれたりする(感覚障害)
- 目の前がぐるぐると回るめまい(回転性めまい)
- ふらふら、くらくらとするめまい(浮動性めまい)
- ものが二重に見える(複視)
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