キロノバの発見には「ローマン宇宙望遠鏡」が最適かも。その理由とは?
キロノバの発見には「ローマン宇宙望遠鏡」が最適かも。その理由とは?

キロノバの発見には「ローマン宇宙望遠鏡」が最適かも。その理由とは?

アメリカ・ロスアラモス国立研究所のEve Chase氏が率いる研究グループは、開発中の宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン」(以下、ローマン望遠鏡)が「キロノバ」の発見に最適であるとした論文を発表しました。ローマン望遠鏡は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が2027年5月に打ち上げる予定の宇宙望遠鏡です。

理論上の現象だったキロノバが初めて観測されたのは、2017年8月17日のことでした。アメリカの重力波望遠鏡「LIGO」と欧州の重力波望遠鏡「Virgo」が、約1億3000万光年彼方から届いた重力波「GW170817」を検出したのに続いて、約1.7秒後にはガンマ線宇宙望遠鏡「フェルミ」が高エネルギー電磁波の放出現象「ガンマ線バースト」を検出。さらに、アメリカ航空宇宙局(NASA)の「ハッブル」宇宙望遠鏡などで追跡観測を行った結果、爆発後に拡散する破片の消えゆく輝きが捉えられました。

しかし、より遠くの宇宙ではより多くのキロノバが発生していると考えられており、1億3000万光年先という天文学的には近所とも言える場所で発生したGW170817は、必ずしもキロノバの代表例ではないかもしれません。イギリス・ダラム大学のDaniel Scolnic氏は、「キロノバがどのくらいの頻度で、そしてどのような銀河で発生するのかや、我々が検出したキロノバは典型的なものなのか、爆発の明るさの程度などについては不明なままだ」と述べています。

【▲ ローマン宇宙望遠鏡でキロノバを検出するイメージ(Credit: Space Telescope Science Institute)】

ローマン望遠鏡がキロノバ発見の強力なツールとなる根拠として、宇宙の膨張があげられるといいます。数十億年前に存在した天体から放射される光(可視光線)は、膨張する宇宙を進むうちに波長が長くなるため、地球では赤外線として観測されます(宇宙論的赤方偏移)。ローマン望遠鏡は近赤外線の検出に特化した望遠鏡であり、約70億光年彼方から放射されたキロノバを検出できるだろうといいます。

また、ローマン望遠鏡が観測に特化している近赤外線には、もうひとつの利点があるようです。キロノバはさまざまな波長の電磁波を放出しますが、ガンマ線2秒未満しか持続しない「ショートガンマ線バースト」として放出されますし、紫外線や可視光線1~2日程度で検出できなくなってしまいますが、近赤外線は中性子星どうしが合体した後も1週間以上観測できるといいます。研究グループによると、ローマン望遠鏡は中性子星の合体後2週間以上ものあいだ観測できるとみられています。

ローマン望遠鏡の観測が始まれば、キロノバがどこで、どのくらいの頻度で発生するのかといった統計的な情報が多く得られると予想されています。Scolnic氏はローマン望遠鏡について「(キロノバなどの)爆発現象に関する物理学の分野で、膨大な新しい分析とともに(キロノバの発生頻度など)統計的な研究が進展し始めるだろう」と期待を寄せています。

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