【年金受給者向け】医療費控除でいくら戻る?還付の仕組みと確定申告のやり方
65歳以上の年金受給者で年収150万円・年間医療費30万円・補填金なしの場合、医療費控除を申告すると所得税11,250円、住民税22,500円が軽減されることになります。
高齢になると、なにかと病院にお世話になる機会は多いでしょう。年金で生活する人には医療費の負担が重く感じられることも多く、「医療費控除の申請をするといくら戻る?」と気になっている人も多いのではないでしょうか? 年金受給者は総所得が200万円未満のケースが多く、医療費控除を利用できるハードルが下がるため、「そんなに多くの医療費を支払っていない」と感じている世帯でも、還付が受けられる可能性があります。 この記事では、医療費控除の仕組みや還付金の計算方法、年金受給者の確定申告のやり方などを解説します。 「申告しなくてもいい」と思い込んで損をしないために、今年の医療費が控除対象になるかどうか、ぜひこの記事で確認してください。
- 年金受給者は確定申告をしなければならない?
- 一定要件を満たしている年金受給者は確定申告は不要
- 確定申告不要制度の対象者
- 医療費控除の申告をすることで税金が還付される場合もある
- 確定申告の医療費控除とは?
- 医療費控除とは年間医療費の一部を所得から控除できる制度
- 医療費控除を利用できる人とは?
- 医療費控除の対象になる費用とは?
- 医療費控除の対象にならない費用
- 医療費控除の還付金の計算方法とは?
- ①1月1日〜12月31日に支払った医療費を合計する
- ②医療費控除の金額を計算する
- ③公的年金等控除の金額を確認して課税所得金額を計算する
- ③所得税の税率を確認する
- ④【医療費控除額×所得税の税率】で還付金の金額を計算する
- 【年金受給者が医療費控除を利用するといくら戻る?】ケース別シミュレーション
- ケース①年収が200万円未満の場合
- ケース②年収が200万円以上の場合
- ケース③セルフメディケーション税制を利用する場合
- 年金受給者の医療費控除の申請方法とは?
- 必要書類をそろえる
- 医療費控除の明細書と確定申告書を作成する
- 税務署に確定申告を行う
- 還付金を確認する
- 年金受給者の医療費控除に関するQ&A
- 医療費控除の申請期間はいつ?
- 高額療養費制度を利用しても医療費控除は申請できる?
- 勤務先の年末調整で医療費控除の申告はできる?
- 医療費よりも給付金の方が多い場合は医療費控除は申告できない?
- まとめ・年金受給者は医療費控除の申告をできる人が意外に多い
年金受給者は確定申告をしなければならない?
一定要件を満たしている年金受給者は確定申告は不要そのため、通常であれば確定申告で税金の過不足を調整する必要がありますが、 一定の条件を満たす場合に限り、確定申告を行わなくても納税手続きが完了する 仕組みが整備されています。これが「年金受給者の確定申告不要制度」です。
確定申告不要制度の対象者確定申告不要制度の対象者は、以下のすべてを満たす人 です。
確定申告が不要となる条件- 公的年金等の収入金額の合計が400万円以下である
- 受け取っている公的年金が源泉徴収の対象になっている
- 公的年金以外の所得が20万円以下である
確定申告不要制度の対象者でも、確定申告の 「医療費控除」や「セルフメディケーション税制」の申告をすることで税金が還付される場合があり 、以下の両方を満たす場合に医療費控除の申請が可能です。
年金受給者で医療費が戻るケース- 年金から所得税が源泉徴収されている
- 一定額以上の医療費を支払っている
年間の医療費が一定額を超えると一定額が所得から控除され、 源泉徴収されていた税金の一部が還付される 仕組みになっています。
確定申告の医療費控除とは?
医療費控除とは年間医療費の一部を所得から控除できる制度医療費控除とは、年間医療費の一部を所得から控除できる制度 のこと。 1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、超えた分の金額が所得から控除 されます。
年収が200万円未満の人は年収の5%を超えた場合 に、 200万円以上の人は10万円を超えた場合 に医療費控除を利用できます。
医療費控除の対象となる費用は治療費だけではありません。 一定の条件を満たした場合の交通費や、ドラッグストアで購入した一部の医薬品も対象 になります。
また、 自分と生計を共にしている親族が使う医療費は合算可能 になるため、確認すると意外と医療費控除の対象になる人は多いのです。
ただし、 医療費控除を利用するためには、確定申告を行う必要 があります。自分で確定申告を行うのは面倒かもしれませんが、医療費控除を行うとその年の所得が少なくなり、その結果、所得税も少なくなるため、払い過ぎた所得税が戻ってくるメリットがあります。
特例である「セルフメディケーション税制」の利用も可能セルフメディケーション税制とは、健康維持や病気予防として一定の取組を行っている人が 1年間に購入した医薬品の金額が12,000円を超える場合、超えた分の金額が所得から控除される制度 のことです。
医療費控除と同様に、生活を共にする親族が使うために購入した医薬品代も含まれます。 控除の上限額は88,000円 です。
■セルフメディケーション税制の対象医薬品
医療用医薬品
スイッチOTC医薬品
医療用医薬品のうち、副作用が少なく安全性の高いものを市販薬に転用したもの・鎮痛消炎剤・解熱鎮痛剤・鎮咳去痰剤・耳鼻科用剤・鎮咳剤・総合感冒剤・抗ヒスタミン剤・その他アレルギー用薬・胃腸の諸症状に 効果のある薬・その他の症状に 効果のある薬など約1,830品目
非スイッチOTC医薬品
2022年以降に購入した市販薬でスイッチOTC医薬品と同種の効能又は 効果を有する一定の医薬品・鎮痛消炎剤・解熱鎮痛剤・鎮咳去痰剤・耳鼻科用剤・鎮咳剤・総合感冒剤・抗ヒスタミン剤・その他アレルギー用薬・胃腸の諸症状に 効果のある薬・その他の症状に 効果のある薬など約1,450品目
なお、医療費控除には「医療費控除」と特例である「セルフメディケーション税制」の2つがあり、 どちらか1つを選択する必要がある ため注意しましょう。
医療費控除を利用できる人とは?医療費控除は以下の要件をすべて満たす場合 に適用されます。
医療費控除の適用要件- 年収200万円以上の人:1年間に支払った医療費が10万円を超える
- 年収200万円未満の人:1年間に支払った医療費が総所得金額等の5%を超える
- 納税者本人もしくは納税者と生計を共にする親族のために支払った医療費である
- 該当年の1月1日〜12月31日までに支払った医療費である
つまり、 医療費控除の基準が10万円ではなく「年収の5%」になるケースが多く、医療費控除の利用条件に該当するケースが意外に多い のです。
医療費控除の対象になる費用とは? 医療費控除の対象になる費用- 医療機関への通院や入院に関する費用
- 通院時の交通費
- 医薬品や医療器具に関する費用
- 歯科治療に関する費用
- 眼科治療に関する費用
- 介護に関する費用
- 妊娠・出産に関する費用
- 診察・治療・入院費用
- 入院時の食費や差額ベッド代
- 医師の処方箋を基にした医薬品の購入費用
- あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師・はりきゅう師によるリハビリやマッサージ費用
なお、 入院時の差額ベッド代は医療機関の指示で差額が発生する病室になった場合のみ対象 になります。自ら希望して差額の発生する病室を選んだ場合は対象になりません。
また、人間ドックや健康診断の費用は基本的に対象外ですが、 診断結果により病気が発覚した場合は医療費控除の対象 になります。発覚した病気を治療するための追加検査なども同様です。
通院時の交通費 通院時の交通費- バスや電車などの公共交通機関の運賃
- 公共交通機関が利用できない場合のタクシー代
- 急を要する場合のタクシー代
- 遠方の医療機関でしかできない治療のために利用した新幹線代
- 1人で通院するのが困難な場合の付き添い人の交通費
バスや電車などの領収書の発行が難しい場合は、 「日付・金額・目的・人数」の記載したメモが領収書代わり になります。
医薬品や医療器具に関する費用 医薬品や医療器具に関する費用- 医師の処方箋を基に購入した医薬品費用
- 治療目的で購入した市販薬
- 松葉杖・補聴器・コルセットなどの医療器具購入費用
- 義手・義足などにかかる費用
医療器具に関しては、原則、 医師が必要と認めた場合のみ医療費控除の対象 になります。
条件- 約6ヶ月以上寝たきりの状態で療養している
- 医師の発行する「おむつ使用証明書」を提出できる
- 保険適用内の治療費用
- 義歯費用
- インプラントなどの自由診療の治療費
- 不正咬合の歯列矯正の費用
歯列矯正は子どもの成長に妨げがある場合など、 歯科医が必要と判断した場合のみ対象 になります。見た目を整える目的で自ら行った場合は対象になりません。
また、 一般的な水準を超えると認められるような特殊な素材を使った治療も、医療費控除の対象外 です。
眼科治療に関する費用 眼科治療に関する費用- 保険適用内の治療費用
- レーシック治療費用
- 角膜矯正療法費用
- 治療の一環として購入したメガネ・コンタクト費用
- 特別養護老人ホームの場合:介護費・食費・居住費のうち、自己負担額として支払った金額の1/2
- 介護老人保健施設・指定介護療養型医療施設・介護医療院の場合:介護費・食費・居住費のうち、自己負担額として支払った金額
- 定期検診や検査費用
- 出産するための入院時の食費
- 出産時や緊急時に公共交通機関を利用するのが困難で利用した場合のタクシー代
- 1人で通院するのが困難な場合の付き添い人の交通費
- 不妊治療や人工授精にかかる費用
- 自ら個室を希望した場合の差額ベッド代
- 健康診断や予防接種の費用
- コンタクトレンズやメガネの購入費用
- 健康のためのサプリメント購入費用
- 美容整形費用
- リラクゼーションが目的の施術費用
- 美容を目的とした歯の治療
- 自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代 など
医療費控除の還付金の計算方法とは?
①1月1日〜12月31日に支払った医療費を合計する ②医療費控除の金額を計算する 控除額の計算方法- 年収が200万円以上の場合:【1年間に支払った医療費】−【補填される金額】−【10万円】
- 年収が200万円未満の場合:【1年間に支払った医療費】−【補填される金額】−【年収×5%】
- 生命保険などの各種給付金
- 高額療養費制度で返金された金額
- 健康保険から支給される出産育児一時金 など
- 社会保険料が控除される前の年金受給額ー公的年金等控除額
■公的年金等控除の計算方法(65歳以上)
公的年金等の収入金額
公的年金等控除
公的年金等の収入金額
公的年金等控除
③所得税の税率を確認する■所得税の税率
課税所得金額
税率
1,000円〜1,949,000円
1,950,000円〜3,299,000円
3,300,000円〜6,949,000円
6,950,000円〜8,999,000円
9,000,000円〜17,999,000円
18,000,000円〜39,999,000円
40,000,000円〜
年金受給者の場合、所得税の税率は5%になる人が多い です。
④【医療費控除額×所得税の税率】で還付金の金額を計算するなお、 医療費控除は所得から控除される制度のため、住民税も軽減されます 。住民税の税率は10%。つまり、「医療費控除×10%」が翌年の所得税から控除されることになります。
【年金受給者が医療費控除を利用するといくら戻る?】ケース別シミュレーション
ケース①年収が200万円未満の場合65歳以上で年金収入150万円・年間医療費30万円の場合 医療費控除額は「300,000円−(1,500,000円×5%)」=225,000円公的年金等控除の金額は、1,100,000円課税所得金額は「1,500,000円−1,100,000円」=400,000円所得税の税率は、5%還付される金額は「225,000円×5%」=11,250円
このケースの場合、所得税と住民税を合計すると、「11,250円+22,500円」=33,750円の税金が軽減されることになります。
ケース②年収が200万円以上の場合65歳以上で年金収入250万円・年間医療費50万円の場合 医療費控除額は「500,000円−100,000円)」=400,000円 公的年金等控除の金額は、1,100,000円 課税所得金額は「2,500,000円−1,100,000円」=1,400,000円 所得税の税率は、5% 還付される金額は「400,000円×5%」=20,000円
このケースの場合、所得税と住民税を合計すると、「20,000円+40,000円」=60,000円の税金が軽減されることになります。
ケース③セルフメディケーション税制を利用する場合65歳以上で年金収入150万円・医薬品の購入費5万円の場合 医療費控除額は「50,000円−12,000円」=38,000円 公的年金等控除の金額は、1,100,000円 課税所得金額は「1,500,000円−1,100,000円」=400,000円 所得税の税率は、5% 還付される金額は「38,000円×5%」=1,900円
このケースの場合、所得税と住民税を合計すると、「1,900円+3,800円」=5,700円の税金が軽減されることになります。
年金受給者の医療費控除の申請方法とは?
必要書類をそろえる 必要書類- 確定申告書
- 医療費控除の明細書
- 本人確認書類(マイナンバーカード)
国税庁の確定申告書作成コーナーでは、指示に従い数値を入力するだけで確定申告が終了 します。e-Taxによる電子申告は税務署が推進している方法でもあるため、できればe-Taxによる確定申告にチャレンジしてみましょう。
医療費控除の明細書に記載する主な内容- 医療を受けた人の氏名
- 医療機関名
- 医療費の区分
- 支払った医療費の金額
- 補填される金額
- 控除額 など
なお、以下の内容が記載されている医療費通知書の原本を提出する場合は、医療費明細書の記載を簡略化できます。
医療費通知書に必要な内容- 健康保険加入者の名前
- 療養を受けた人の名前
- 治療を受けた年月
- 療養を受けた医療機関の名前
- 健康保険加入者が支払った医療費の金額
- 健康保険組合等の名称
- ①に住所と名前を記入する
- ②に医療費通知書に記載されている自己負担の合計額を記入する
- ③に実際に支払った医療費の合計額を記入する
- ④に医療費のうち補填された金額を記入する
- ⑤に通院のための交通費など、医療費通知書に記載されていない医療費控除の対象になる費用の詳細と補填された金額を記入する
- ⑥医療費控除の対象になる金額の合計金額と補填される金額の合計金額を記入する
- ⑦AとBにそれぞれ⑥の金額を、Cに「A−B」の金額を記入する
- ⑧Dに確定申告に記入する「所得金額の合計欄」の金額を記入する
- ⑨Eに「D×5%」を、Fに10万円とEの金額を比較して少ない方の金額を記入し、Gに「C−F」の金額を記入する
書類の作成ができたら、 2月16日〜3月15日の間に税務署に申告 します。紙で書類を郵送する他、インターネットによる「e-Tax」での申告も可能です。
還付金を確認する年金受給者の医療費控除に関するQ&A
医療費控除の申請期間はいつ?逆に考えると、 5年以内ならばさかのぼって申請することが可能 ということ。過去の医療費の領収書を保管している人は、ぜひ確認してみてください。
高額療養費制度を利用しても医療費控除は申請できる?高額療養費制度を利用しても医療費控除は申請可能ですが、 高額療養費として返金された金額は医療費から差し引かなければならない ため、注意しましょう。
勤務先の年末調整で医療費控除の申告はできる?勤務先の 年末調整では、医療費控除は申請できません。
医療費よりも給付金の方が多い場合は医療費控除は申告できない?保険金や給付金などの医療費から差し引く 「補填される金額」は、その保険金を受け取る原因となった医療費に対してのみ差し引く というルールがあります。
例 がん治療に関する入院・手術費用:100万円 がん治療に対する給付金:150万円 別の病気の治療費の合計:15万円
まとめ・年金受給者は医療費控除の申告をできる人が意外に多い
参考資料
この記事の監修者
岡地 綾子 【ファイナンシャル・プランナー】2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 年金制度や税金制度など、誰もが抱える身近な問題の相談業務を行う。 得意分野は、生命保険・老後の生活設計・教育資金の準備・家計の見直し・相続など。
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- ①1月1日〜12月31日に支払った医療費を合計する
- ②医療費控除の金額を計算する
- ③公的年金等控除の金額を確認して課税所得金額を計算する
- ③所得税の税率を確認する
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